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キアゲハ通信No.020-「重症急性呼吸器症候群(SARS)」

2014.03.24 更新

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「重症急性呼吸器症候群(SARS)」

院長 西田 善彦

  今回はちょっと真面目に医学のことを取り上げます.今年の医療関係のトップニュースはSARSです.SARSは新聞やテレビで連日のように報道されていますので,ほとんどの方がご存じだと思いますが,昨年(2002年)11月に中国の広東省で始めて発生した新しいウイルスによる流行性の重症肺炎です.東南アジアのみならず飛行機を介して北米や欧州にまで飛び火して全世界に感染拡大の危険性があることや死亡率が1割前後にも上ることなどを重大視して世界保健機構(WHO)が2003年3月12日にSARSという名前に命名したのです.

 SARSは,ウイルスによる飛沫および接触感染で2~7日の潜伏期を経て発症します.その症状は発症時には急に38℃を超える発熱が1日以上続き,頭痛,悪寒,倦怠感,筋肉痛なども伴います.その後,3日くらいして痰の出にくい咳や呼吸困難など呼吸器症状が出現します.大体80~90%の人は発症後6~7日で快方に向かいますが,各種抗生物質,副腎皮質ステロイドホルモン,抗ウイルス剤などに反応せず高齢者や糖尿病などの慢性疾患を持った人を中心に10~20%の人が重篤化し,低酸素血症などをきたし酸素吸入や人工呼吸器による呼吸管理を必要とするようになるそうです.治療に特異的なものがない以上,予防が1番ですが,新しいウイルスによる疾患のためワクチンの開発には今しばらくかかりそうです.そのため現在最も有効なのはマスクなどの着用によるウイルスの遮断やアルコールなどによる消毒といわれています.

 思えば,C型肝炎,MRSAにエイズと新しい感染症はいつも身近なところや意外なところから見つかりました.とにかくこの病気に限らず細菌やウイルスは目に見えない病原体ですからどこに何が潜んでいるか分かりません.自分以外のものはすべて不潔(実は自分も不潔なことが多いのですが)と考えてインフルエンザの時のように普段から用心して手洗いやうがいを励行するように心掛けて下さい.

(院内広報誌「なんきんまめ No.20(2003.7.1)」に掲載)
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