ジストニアについて

2002.04.29 放送より

 ジストニアというのは、筋肉が持続的に緊張することにより四肢や体幹が異常な姿勢を取る状態をいいます.具体的には手や足あるいは首や胴体を激しく曲げたり(=回旋)、捻らせたり(=捻転)、あるいはそうした動きを反復させたりいたします.

 ジストニアはその起こる場所によって全身性のものと局所性のものの大きく2つに分けられます.全身性のものは、幼少期から発症するものが多く、大脳基底核という脳の奥の方にある筋肉の緊張を調整する部分が障害されることなどによって起こります.頻度的に多いのは、周産期の障害である脳性麻痺ですが、先天代謝異常であるウイルソン病やさまざまな神経変性疾患に合併したり、脳血管障害や脳炎などの後遺症としてみられることもあります.

 一方、局所性のジストニアにもいろいろあり、起こる部位別に眼瞼痙攣、痙性斜頚、書痙などといわれています.今日はジストニアの中でも最近伊月病院で積極的に治療を行っております局所性ジストニアについてお話したいと思います.

 まず眼瞼痙攣ですが、これはまぶたが勝手に収縮し、まばたきが多くなり、進行すると目を開けておれなくなります.特に普段開いていても何かしようとしたとき、例えば人と会って面談せねばならないときや車の運転などをしようとしたときなどに悪くなるのでやっかいです.従いまして、自分の不都合なときだけ悪くなるように周囲に思われ、ヒステリーなどと誤解されることもあります.確かに心理的因子が重要な要因となっていることもありますが、電気生理学的な研究からやはり大脳に器質的な変化が起こり発症すると考えられております.

 治療としましては、薬物療法として抗コリン剤の大量療法、抗ドーパミン作用のある薬剤、筋弛緩作用の強い安定剤などを内服していただきますが、便秘やのどの渇き、眠気やふらつきなどさまざまな副作用があり、また効果も完全ではないためなかなかうまくゆきません.

 そこで近年切り札的な治療法となっているのが、A型ボツリヌス菌から精製されたボツリヌス毒素による治療です.これはいわば毒を持って毒を征するような治療法であり、世界最強の毒物であるボツリヌス毒素をごくごく少量だけまぶたの収縮している筋肉内に注射することにより神経から筋肉へ興奮を伝えるアセチルコリンという物質の神経からの放出を抑えて筋肉を麻痺させます.大体、注射後数日くらいしてから効き始め、その効き目のみられる3~4ヶ月間は、治ってしまったかと思われるくらい目がぱっちりと開いております.毒素が切れてくるとまた注射をし直す必要がありますが、大した副作用もなく、しかもほぼ確実に効きますので、内服薬だけしかなかった以前に比べ眼瞼痙攣は難病ではなくなってまいりました.

 次に痙性斜頚についてお話しいたします.痙性斜頚は首から肩のあたりの筋肉の異常な収縮によって頭が上下左右に傾いたり回ったりします.また肩があがることもあり、しばしば痛みを伴います.筋肉の収縮が持続的で首や頭が変位したままのジストニア型と不規則に収縮するため首や頭が揺れるチック型があります.いずれも立ったり緊張すると増悪し、横になったり眠ると軽減あるいは消失します.20~40歳代で発症することが多いようですが、男女差は無いといわれております.病前性格としてはまじめで自責感が強くまた秩序を重視し他人への配慮を重んじて自分の感情を抑圧してしまう、あるいは強迫観念が強いなどがあります.

 治療としては先ほどの抗コリン剤などの薬物を使いますが、中には遅発性ジストニアといいまして治療で用いるような抗うつ剤などの精神薬あるいは抗パーキンソン病薬などを長年内服して起こってくることもあり、うまくいかないこともままあります.そこで薬の内服以外ではこれまた先ほどのボツリヌス毒素の注射が有力な治療法となります.これは実はまだ去年の夏にやっと認められたところなのですが、患者さんの間では長い間待ち望まれていた治療法のようです.

 まぶたの筋肉と首の筋肉では、筋肉の量がまるで違うため、注射する毒素の量が眼瞼痙攣に比べるとかなり多いため、約3ヶ月ごとに何回かに分けて打たないときかない場合もあり、中には毒素に対する抗体が体の中にできてしまうこともあります.そのような場合、MAB(Muscle Afferent Block)療法といいまして収縮している筋肉に局所麻酔剤とアルコールを打ち込み、筋肉から神経への運動や姿勢に関係した知覚情報を一時的にブロックすることにより症状を軽減させる方法もあります.こちらは、週に2回の割で1~2ヶ月打ち続けることになります.

 このほかに知覚トリックといいまして首や頭の変位する反対側に自分の手を当てると症状が軽快する現象を利用する方法や心身のリラックスをはかる自律訓練法などもあります.とにかく患者さんによって症状も病因も異なりますが、それぞれに適した方法が何かありますので、ぜひ専門の先生にご相談されることをお勧めいたします.

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