加速度病について

2001.05.17 放送より

 今日は、加速度病についてお話しいたします.加速度病は動揺病ともいわれ、いわゆる乗り物酔いのことです.

 乗り物酔いの代表は、船酔いだと思いますが、これを引き起こす原因は普段の日常生活には見られない揺れです.揺れには、ピッチング pitching という縦揺れ、ローリング rolling という横揺れ、ヨーイング yawing という水平面での左右への揺れ、ヒーヴィング heaving という上下動、それにフォーリング fallingという 急速落下などがあります.こういったさまざまな揺れが不規則かつ反復して繰り返されることにより耳の奥にある内耳の中の迷路という部分が過剰に刺激されます.迷路は、身体のバランス (医学用語では平衡といいます)を司る器官であり、平衡感覚の情報にずれが生じます.すなわち、人は目でみる情報(景色など)=視覚情報とそれに伴う身体の位置情報を脳の中で重ね合わせて調節し、自分の身体の位置関係や傾き具合などを知り、知らず知らずのうちに姿勢を崩さないようにしているのです.車や船などに乗ると普段に経験したことのない揺れや近くを急速に流れ去る景色などの情報がもたらされ、迷路の中の三半規管という部分で感じている身体の平衡感覚と実際の身体状況の間にずれを起こしてしまい脳の中で調節しきれなくなってしまいます.その結果、自律神経障害が生じ、嘔吐などの「酔う」という症状が引き起こされてしまいます.

1.症状

 症状につきましては、皆様、当然ご存じのことと思います.乗り物酔いの症状で最初におこるのは顔面蒼白です.これに引き続いて冷汗や悪心(すなわち吐き気)が起こります.吐き気に引き続き、実際に嘔吐が起こる場合もあります.嘔吐は、胃の運動が低下し、次いで2次的に胃が拡張し、十二指腸や腹筋が収縮しておこります.また呼吸換気量の増加、あくびの頻発、脈拍数の増加あるいは減少、血圧の上昇あるいは低下なども見られます.これらはいずれも交感神経や副交感神経のアンバランスによる自律神経の障害なのです.

2.酔いやすい人と酔いにくい人との違いは?

 といいますと、先に出てきました迷路の中の三半規管の能力の違いといわれています.この三半規管が未熟であったり、正常に機能しなくなっていたりすると酔いやすいわけです.一般に、乗り物酔いは2歳ぐらいから始まり、年齢が上がるにしたがって増えていき、5~12歳ぐらいがピークで、その後は乗り物に慣れてくることもあり、だんだんと少なくなるといわれております.平衡感覚は訓練によって向上しますから、乗り物酔いもある程度の経験によって克服できるというわけです.

3.乗り物酔いに対する対策

 乗り物酔いを起こす条件として内耳の機能以外にも次の3つのことがいわれております.それはまず始めに、環境的影響で、これは発進と停止を繰り返したり、道が悪くて車が揺れたりすると酔いやすくなります.また、ガソリンなどのにおいがすると気分が悪くなることがあります.

 次ぎに心理的影響で以前に酔った経験を思い出したり、酔った人を見て自分も具合が悪くなることがあります.さらに身体的影響で過労や睡眠不足、風邪をひいていたり、お腹をこわしていたりすると酔いやすくなります.すなわち、乗り物酔いには体調や心理面なども大きく影響を与えるというわけです.従いまして乗り物酔いを防ぐには、まずは一般的に乗る前の対策として、前日の充分な睡眠や適時で適当な量の食事など体調を整えることも大切です.次ぎに酔う前に酔い止めの薬を飲むことです.酔い止めの薬としては、中枢神経系でアセチルコリン活性を抑制する薬剤、交感神経の働きを高める薬剤、抗ヒスタミン薬などがあげられます.具体的にはスコポラミン、エフェドリン、ピレチアなどという名前の薬で、これらは相乗効果が期待されておりますので、組み合わされて市販の酔い止めの薬の中に含まれております.

 続いて乗り物に乗ってからの注意ですが、揺れの少ない乗用車の助手席やバスの真ん中あたりに座ること、進行方向を向いて座りきょろきょろしない、近くを見ずに、遠くの景色などを眺めるようにする、窓を開けて新鮮な空気を入れる、歌を歌うなど気を紛らわす工夫をするなどがあります.それでも揺れがひどい時にはその揺れが起こる方向に頭を向けてやるようにすると揺れに対して慣れやすくなります.すなわち右へ傾いたときには左へ頭をやるとか、左へ大きくカーブした時には、遠心力で右へ持って行かれるのに逆らって左の方へ頭を向けるなどの方法もあります.しかし、酔いそうだと少しでも感じてしまったら出来るだけ横にならせてもらうのが一番良いように私は個人的に思います.

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