日本紅斑熱について

2004.07.18 放送より

 お手紙拝見いたしました.手紙の内容は,“春にニュースでダニに刺されて亡くなる病気がある”と報道され,その病気の症状や治療法をお知りになりたいということ,家のダニは大丈夫かということ,子供さんを連れて山や川によく行かれるそうで屋外に行く時の注意点や市販の虫よけスプレーは効果があるかということなどのご質問です.

 それではまずダニに刺されて起こる病気からお話ししてゆきます.この病気としては実は2つあります.1つは古来から風土病として北海道と沖縄を除く日本のほぼ全土にみられるツツガムシ病で,これはOrientia tsutsugamushiという菌によって引き起こされます.一方,もう1つは,実は1984年に徳島県の阿南市で始めて発見された新種のRickettsia japonicaいう菌によって引き起こされる日本紅斑熱であります.この方がみられたのは,おそらく日本紅斑熱のほうだと思うので,まずこの病気について説明し,ツツガムシ病の方もよく似ていますのでその後にこの2つの違いを中心に簡単にお話しいたします.

 日本紅斑熱は山野で病原菌を有したマダニに吸血されて感染いたします.感染後2ないし8日間の潜伏期を経て,38.5℃から40℃を超える高熱がみられ,続いて頭痛,悪寒,全身倦怠感とともに2~3日のうちに発疹が出現いたします.この発疹は米粒大から小豆大の紅斑で手足,末梢部から体幹へと広がります.また手掌にみられるのもツツガムシ病との異なる点です.局所にはダニによる刺し口として5~10mm大の発赤ができ中心部に2~3mmの黒い痂皮を認めます.

 そして刺し口周囲のリンパ節は腫れないことが多いようです.次に検査所見ですが,白血球は普遍かやや増多し,Weil-Felix反応というリケッチアの反応が陽性に出ます(OX-2陽性).また炎症反応であるCRPは強陽性となり,肝障害としてGOT,GPT,LDHなどの上昇も認められます.治療としてはテトラサイクリン系の抗生物質やニューキノロンの内服などが有効です.但し診断が遅れ重症化すると,けいれん,意識障害,DICなどをきたすこともあります.

 始めに徳島で発見されましたが,その後,高知,千葉,島根,宮崎,鹿児島と主に西日本の太平洋側で報告されています.4月から10月にかけて多い(徳島では春先に多い)とされ,最近では年間40名弱の方が発症されているようです.これに対してツツガムシ病の方は,ほぼ日本全国に分布し,年間約500名の発症が届け出されております.時期は秋から初冬にかけて多いようですが,東北地方の1部では春から初夏にかけても見られるようです.宿主であるツツガムシは草むらや林の土中で生息していますが,成長過程でその幼虫は1度地表に出て野ネズミなどの動物に吸着します.この時に幼虫がリケッチアを持っているとその差し口から人へも感染いたします.こちらは差し口が10mm程度と大きく,潜伏期は5~14日とより長いようです.症状は日本紅斑熱と類似しておりますが,異動する点としては,発疹は斑紋状ないし丘疹状の不規則な紅斑で胸や背中など体幹部に多く手掌には見られないようです.また発熱は38.5℃程度でやや低めで,こちらはリンパ節腫脹を伴うことが多いようです.検査所見では,白血球は減少傾向を示し,異型リンパ球がみられるようです.Weil-Felix反応は陽性(OX-K陽性)でCRPも強陽性となります.またGOT,GPT,LDHが上昇する点は同じです.治療としてはテトラサイクリン系の抗生物質はこちらでも有効ですが,ニューキノロン系のものは効かないようです.重症例ではDICによる出血傾向(主な死因),昏睡やけいれん,肝障害,心筋障害による血圧低下,間質性肺炎や胸膜炎なども合併してきます.

 次に家にいるダニは大丈夫かというご質問ですが,ダニの種類は実に2万種類といわれております.このうち家にいるダニの約60~70%は,ヒョウヒダニというホコリのような色をした体長0.2-0.5mmの小さなダニでたたみ,じゅうたん,ふとんなどによく発生します.これはご存じのようにアトピー性皮膚炎,鼻炎,気管支喘息などの重要なアレルゲンの1つです.さらにツメダニ,イエダニ,シラミダニなど人を刺すダニやヒゼンダニといって疥癬という病気を引き起こす有害なダニもおります.しかし今回お話ししたマダニ(体長数mm-1cmと大きい)やツツガムシの幼虫(体長0.3-0.8mm)は家の中にはいないようです.但し伊月病院でも以前,市街地のはずれの方の庭で作業中にツツガムシ病に罹患された方を見たことがありますので少し草むらへはいる時は気をつけた方がよいかもしれません.

 次に屋外に行く時の注意ですが,この病気に効くワクチンは有りませんので多発時期には感染の可能性のある地域の林や草むらには立ち入らないことが1番です.また市販の虫除けクリームやスプレーの使用や手足の露出を避けることも有用と思います.そして感染機会のあった後の発熱には注意して医療機関で刺し口を確認してもらい早期に治療にかかることが重要と思われます.

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