熱中症について

2002.06.29 放送より

 熱中症とは、直射日光や高温多湿の環境のもとで運動や作業などを行っていて熱の放散がうまくゆかず体内に熱がうっ積して、めまい、吐き気、頭痛、さらにケイレンや意識障害などさまざまな身体の障害が現れることをいいます.現在、その障害の程度に応じて軽い失神や筋肉のケイレン程度の第Ⅰ度からショックや意識混濁まで示す第Ⅲ度に分けられることもありますが、一方、その障害のされ方により従来は日射病、熱痙攣、熱疲労、熱射病の4種類に分けられており、本日はこちらについてご説明いたします.

 始めに日射病(Ⅰ度に相当)ですが、これは気温の高い時に長時間直射日光にさらされた時に起こるもので、熱を放出しようとする正常の反応により全身の皮膚の血管が拡張したり、運動による筋肉への血流が増加したりして、心臓による全身への血液の送り出しが相対的に足りなくなり、循環不全状態となります.この結果、低血圧、脈圧の狭小化、頻脈、皮膚冷汗などとともに、めまい、立ちくらみ、吐き気などがみられます.この場合、体温は正常化もしくはむしろ低下しており、体温の上昇による体の組織の障害はみられません.応急的な治療は、日陰で頭を低く足を20~30cmほど挙上させたショック体位をとり、締め付けている衣類があればゆるめた上で、水に濡らしたタオルなどを用いて全身を冷やすことです.心臓や頚、脇の下、大腿部などの表皮に近い動脈に氷などを当てて血液を冷やすことも効果的です.

これで回復しない時は点滴が有効です.小さな子供や老人は勿論のこと肥満者やお酒を飲み過ぎた時にも起こりやすいので要注意です.

 次に熱痙攣(Ⅰ度に相当)ですが、これは高温多湿の状態で長時間汗をかき続け、その発汗に対して水分のみを補給し塩分を補給しなかった時に起こります.この結果、血中の塩分濃度が低下して低張性脱水となり、頭痛、口渇、低血圧などとともに腕や肩、脚などに有痛性のケイレンをきたします.この場合も体温はほぼ正常に保たれております.治療としては、日射病の時のように体を冷やすことは勿論ですが、ケイレンを起こしている筋肉には、暖かいタオルを当ててケイレンをやわらげます.さらに低張性脱水を改善するために冷たい0.1%の食塩水(コップ1杯に茶さじ1杯)を少しずつ飲ませるか塩類を含んだ点滴が必要です.

 それから熱疲労(Ⅱ度に相当)ですが、こちらも熱痙攣の時と同じく高温多湿の状態で汗を大量にかき水分と塩分を失い、さらに血圧が下がり血液の循環もうまくゆかなくなります.こうなると体がだるくなり、呼吸や脈拍は速くなり、めまい、頭痛、吐き気などがみられ、さらに悪くなると興奮から意識低下(普段よりぼんやりしている)と意識の障害がみられることもあります.熱の産生に対して熱の放散が追いつかず、体温も中等度上昇いたします.治療は先程から述べているように体を冷やすことと水分とともに塩分を補給することですが、次に述べます熱射病と厳密に区別できないこともあり必ず医師に診てもらうことが必要です.

 続いて1番重いのが熱射病(Ⅲ度に相当)です.これは原則として熱疲労と同じ状態でより重症なものです.脱水と循環不全で体温の調節が破綻し、体温は40℃を越えて著しく上昇します.高熱とともに汗をかかなくなり、こうなると心臓や脳など体の中心部に熱がこもるうつ熱状態となり、組織障害が進んでゆきます.例えば、脳では脳浮腫、脳圧後進をきたし、全身のケイレンや意識障害(昏睡)をきたします.心臓では血圧が下がりショック状態となり、呼吸は当初は速く進行すると弱くなり下顎呼吸になります.肝臓では肝細胞の壊死が起こります.このため凝固因子を作れなくなり、循環不全に伴う血管内血栓で消費されることと併せて出血傾向をきたします.また有害なアンモニアの上昇をきたし意識障害を増悪させます.腎臓にもショックによる直接の障害のほか、全身の横紋筋が融解し筋肉中からミオグロビンという蛋白が血中に漏れだし腎尿細管でつまることにより、急速に腎不全をきたします.このようにいずれも命に関わるような重篤な障害が起こってまいりますので、熱中症が疑われたら一刻も早く病院を受診して多臓器不全にならないように防いでもらわなければなりません.

 夏は暑くて当然ですから体力のない人(老人や子供)、体調の悪い人、基礎疾患のある人などは暑さに気をつけ、積極的にスポーツドリンクなどで水分と塩分を補給する必要があります.さらに健康な人でも気温が30℃以上になると、体温が下がりにくく熱中症を起こしやすくなりますので、帽子をかぶったり風通しの良いゆったりとした服を着て直射日光を避けてください.

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