糖尿病の方に起こっためまい発作について

2003.09.14 放送より

 お葉書拝見させていただきました.お葉書の内容をまとめてみますと74歳の糖尿病にかかっている男性の方が3年前からこれまでに3回ほど軽いめまいとふらつき、それに一瞬意識が遠のくような発作を起こされていて、いずれも少し休んでいるうちに元に戻ったとのことです.

 この方は、現在ゴルフや釣りなど運動がお好きで1600から1800カロリーの食事療法をされていて、ほかに大きな病気はないとのことですが、実際、どのくらい前から糖尿病があり、またどの程度にコントロールされているのか、あるいはまた肥満があるのか、さらに喫煙されているのかなどいろいろお伺いしたいことがあるのですが、お葉書からは分かりません.そこで本日は取りあえず一般的に考えられることをお話ししたいと思います.

 まずこのかたに起こった現象は、恐らく脳の中でも脳幹と言って脳の奥深くにあり、内耳などめまいに関係のある部分を支配している脳神経の核が存在し、さらに意識の維持にも関係の深い部分に血液が充分行き届かなかったためではないかと思われます.そしてその起こった原因としては大きく分けて2つの可能性が考えられます.すなわち1つ目は、一過性脳虚血発作が起こったのではないかと思われるのです.

 一過性脳虚血発作はtransient ischemic attackの訳語であり、TIAと略します.これはその名の通り、脳にゆく血液がごく短時間だけ途絶えてしまい、その結果手や足に力が入りにくくなったり、言葉がうまくしゃべれなくなったりいたします.脳には内頚動脈と椎骨動脈という大きな動脈が左右にあり、合計4本の血管で栄養されていますが、先ほどお話ししました手足の麻痺や言葉が出てこないなどの症状は内頚動脈が詰まりかけた時にみられます.一方、椎骨動脈では、めまいやふらつき、さらに失神発作などが起こるようです.

 すなわちこの方の場合、椎骨動脈側の血流が何らかの原因で詰まりそうになったのではないかと思われます.この方には、糖尿病がお有りなので動脈硬化が生じ、椎骨動脈が詰まりそうになっているのかもしれません.あるいは運動がお好きなようなので、頚などに負担がかかっていますと頚の骨が変形している可能性があります.椎骨動脈はその名の通り椎骨すなわち頚の骨の間を通って脳の中に向かいますので、その途中で頚の向きによって動脈が圧迫され血流が途絶えてしまったのかもしれません.さらにまた動脈硬化に加えて運動などで汗をかいて血液が濃縮して流れにくくなった可能性や心臓や椎骨動脈などに血栓が出来ていてそれが何かの拍子にはずれて脳幹で詰まりかけた可能性なども考えられなくもありません.

 次にもう1つの可能性についてお話いたします.それは起立性低血圧によって脳の血流が途絶えたのではないかという可能性です.糖尿病の3大合併症の1つに神経障害があります.糖尿病性神経障害には比較的早期からみられる手や足の先などがじんじんしたりする末梢神経障害がよく知られておりますが、それ以外に自律神経障害があるのです.この自律神経障害の症状としては、汗をかきにくい、尿意を感じないあるいは尿の出が悪い、便が出にくいなどとともに、立ちくらみすなわち起立性低血圧があります.起立性低血圧とは、普通は横になった時と立った時ではほとんど血圧に差がないのですが、立位時に血圧が著しく低下(臥位や座位から起立時に20mmHg以上の収縮期血圧低下)してしまい脳の血流量が低下して症状がみられる病態をいいます.

 脳の血流量の低下が軽度ないし中等度では、気が遠くなる、頭がふらつく、めまいを感じるくらいですみますが、重度になると失神や全身けいれんをきたすこともあります.この起立性低血圧は、糖尿病に特徴的なものではなく、パーキンソン病など神経を障害する疾患の部分症状としてみられることや2次的に神経を障害する疾患として腎不全やアルコール性神経障害などでもみられます.この2次的に自律神経を障害する疾患の中で糖尿病は実に約50%を占めています.(これ以外にも降圧剤などによる薬剤性のもの、アジソン病など内分泌疾患、各種心疾患などでもみられます.)起立性低血圧がどうして起こるのかというと、そもそも急に立ち上がるなどすると血液が重力のため足など体の下の方の静脈に貯まろうとするため血圧は下がり気味になります.これでは脳の血流を確保できないため大動脈弓や頸動脈小体というところにある圧受容体が刺激され、交感神経の興奮が生じアドレナリンが分泌され、脈拍を速める、心臓の収縮力を増す、足の血管の緊張を高めるなどして血圧を維持しようとする反射がみられます.糖尿病ではこの交感神経の反射弓が障害され、アドレナリンの分泌が鈍くなり起立性低血圧が生じるというわけです.

 ご質問の方は以上いずれかの可能性が有るといえますが、いずれにしましても1つ間違えば危険な状態になるかと思いますのでなるべく早く調べていただいた方がよろしいかと思います.

戻る

タグ:

JRTラジオ 健康相談あなたの診察室

ピックアップ
ソフト食
認知症検査「DTナビ」
自動車運転シミュレーター

いちえ会関連施設

アクセス

ページの上部へ