耳鳴と不眠にお答えして

2002.10.29 放送より

 お葉書ありがとうございます.この56歳の主婦の方の訴えをまとめますと、30歳代後半にストレスからメニエル氏病を発症し、以後も耳鳴が続いていて次第にひどくなってきているものの耳鼻科的には特に異常が認められていないということと、不眠症があり安定剤などで治療しても効果がないということになると思います.そしてそれらのことでお悩みになり、今後さらに脳の障害が起こってくるのかと心配されているようです.

 それではお葉書の内容だけでは詳しいことは分かりかねますが、この2つの点に絞って順番に考えてゆきたいと思います.まずメニエル病ですが、これは以前にもこの放送でとりあげたことのある回転性のめまいをきたす代表的な疾患の1つです.
この病気は.回転性のめまい、難聴(特に耳の詰まったような感じ=耳閉感)、耳鳴りなどを反復することが特徴です.耳の奥の内耳に起こる内リンパ水腫が原因とされており、自律神経機能異常、アレルギー、自己免疫異常、各種ストレス(精神的および肉体的疲労、睡眠不足、過労)などによって引き起こされることがあり、40~50歳代が好発年齢で、神経質で、几帳面な人に多いようです.

 従いまして、この方は30歳代後半の当時にめまいや難聴があったかどうかよく分かりませんが、メニエル病に罹られたのは間違いないように思います.但し、メニエル病は発作的に起こりしかもそれが反復いたしますが、その発作間歇期にはあまり症状が残らないことが多いようです.もしメニエル病に初めて罹患してから現在に至るまでの間に大しためまい発作もなく徐々に耳鳴りがひどくなってきているのであれば、耳鳴りをきたす別の疾患を考えなければなりません.

 耳鳴りは、外耳や中耳の病変が内耳の細胞を過剰に刺激することや内耳の病変が聴神経を刺激することによって起こるのではないかと考えられておりますが、外耳、中耳、内耳、聴神経など耳自体の異常で起こるのみならず全身の病気の1症状としてみられることもあります.具体的な耳の病気としては、メニエル病以外に耳垢栓塞、急性および慢性中耳炎、耳管狭窄症、耳硬化症、内耳炎、音響外傷、突発性難聴、老人性難聴、聴神経腫瘍などがあります.これらはいずれも大なり小なり聴力の低下を伴うものですから、この方の聴力が正常であるかどうかが1つのキーポイントになります.耳鳴りがめまい発作とともに間歇的に起こり、次第に増悪して後遺症的に残るようになったのであればメニエル病によるものだといえそうです.また耳鳴りと聴力低下が持続していて徐々に増悪してきているのであれば、まさか耳垢栓塞ということは無いでしょうが、耳管狭窄症や耳硬化症、ちょっと年齢的に早すぎますが老人性難聴の始まりなども考えられます.

 しかし本当に耳鼻科的に異常がないというのであれば、耳以外の病気に伴う部分症状として考えなければなりません.耳鳴りをきたすことのある全身性疾患としては、高血圧、甲状腺疾患、血液疾患、神経症などが挙げられます.また病気ではなくストレス、過労、不眠、さらに二日酔いなどでも耳鳴りは起こりますし、神経質な人では静かなところで耳鳴りを感ずることも少なくないようです.

 次にこの方のもう1つの大きな訴えであります不眠ですが、これは丁度前回にお話したところです.この方がお聞きになったかどうか分かりませんので、ごく簡単におさらいします.不眠にはいろいろなタイプがあり、眠れるまでに1時間以上かかるという入眠障害、夜中に何度も起きてしまい眠った気になれない熟眠障害、夜中や早朝に目が覚めてしまいその後眠れなくなる途中覚醒などがあります.入眠障害は、寝つきの悪いタイプの睡眠障害で、比較的若い人(40歳前後)に多く、治療法としてはまず眠りを妨げる環境や基礎疾患(例えばかゆみや咳などがあればこれを抑える)を改善することです.それでも眠れないときは、作用時間の短い超短時間型睡眠導入剤を使用します.次に熟眠障害は中年から老年期に多く、またうつ病などでもみられます.

 治療法としては、やはりまず環境や基礎疾患の改善を行い、それでもだめな時には短時間型あるいは中間型の睡眠導入剤を使用します.また途中覚醒は神経症性のもの即ち不眠症でみられることが多いほか、うつ病や高齢者でもみられます.この場合も環境や基礎疾患の改善に加えて短時間型あるいは中間型の睡眠導入剤が用いられます.この方の場合、どのタイプの不眠であるかお葉書の内容からだけでは分かりませんが、安定剤に頼るだけでなくまず基礎疾患があればそれを治すこと、環境も改善すべきは改善することが大切だと思います.

 以上の2つの点をあわせて考えますと、どうも少し神経質になりすぎているように思え、将来重大な神経疾患を来しそうには思えませんが、何か見落としがあればいけませんので、やはり精密検査のために1度神経内科を受診されることをお勧めしたいと思います

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