認知症への対処について

2006.05.28 放送より

 今日は、年々増加し日本には約190万人はいるといわれ何かと話題になっている認知症についてその対処の仕方についてお話しいたします。

 そもそも認知症というのは、「脳や身体の疾患を原因として、記憶・判断力などの障害が起こり、普通の社会生活が送れなくなった状態」と定義されています。そして認知症をきたす疾患としてもっとも多いのが、有名なアルツハイマー病でこれとその次に多い脳血管性認知症を合わせると過半数を超えます。それから神経難病の中でパーキンソン病およびその関連疾患なども進行すれば認知症を合併してきます。
その他脳をおかす疾患としては、慢性硬膜下血腫、脳腫瘍などがあります。さらには内科的な疾患の中でも甲状腺や下垂体の機能不全症などの内分泌疾患、ビタミンB群の欠乏などの代謝性疾患、肝性脳症や透析脳症、そしてアルコールを始めとした薬物あるいは毒物中毒などさまざまな疾患があげられます。

 さて認知症の症状として皆様がまず1番に思い浮かばれるのは、物忘れすなわち健忘だと思います。実際、物忘れがひどくなったといわれて、認知症を心配され、物忘れ外来(認知症外来では敷居が高い)を受診される方も多いと思います。単なる老化によるど忘れと認知症による健忘をおおざっぱに区別するとすれば、老化によるものは、単に記憶障害のみで他に精神症状は伴わず、進行性も半年やそこらではみられず、また物忘れがひどいと自覚があります。

それに対してアルツハイマー病などの認知症によるものでは、進行性があり、物盗られ妄想などの精神症状を伴っていることがあり、さらには病識がないことが多いと思います。認知症の中心となる症状は、この記憶障害(直前のことを忘れ、同じことを繰り返してしまう)に始まり、見当識障害(今日はいつ、ここはどこ、私は誰?)、そしてさらにはさまざまな判断力や理解力の低下がみられ、それらが進行して行くことが多いようです。また周辺症状としては、易怒性や興奮などの感情障害、幻覚や妄想、不潔行為を始めとした行動異常などがあります。

 それでは、これからそれぞれの症状についてどのように対処すればよいか具体的にお話してゆきます。まずは病初期からみられる物忘れですが、例えば食事で何を食べたかではなく食べたこと自体を忘れてしまいます。つい2時間ほど前に食べたばかりなのにまだ食事をしていないといわれることがあります。このような時に「今さっき食べたところでしょ」とただ単に否定しても「私は食べてない」と押し問答になってしまいます。食べた食べないで白黒をはっきりさせようとすると挙げ句の果てに「自分たちだけが食べて私には食べさせてくれない」と被害妄想を持たれる場合も出てきます。

このような場合は、物忘れを逆手にとって例えばご本人の好きなおやつや果物あるいはおつまみのようなものを出してあげて「今、食事の用意をしているのでそれまでの間、これでもつまんでいて下さい」と機嫌をとって時間を稼ぐのが上手なやり方だと思います。

 それから物忘れに妄想が加わったものに物盗られ妄想があります。これは大切な物だからとその人なりに意識して自分が普段よく置いておくような場所に置かずしまい込んでしまい、結局どこにしまったか忘れてしまいます。そうするといざ必要な時に捜そうとしても普段良く置いてあるところになくて見つかりません。

その結果、「おかしい。ここに置いておいたのに誰かに盗られたに違いない」と周囲を疑いにかかります。この時、普段一番親身になって介護している人に疑いの目がかかりますので困りものです。このような時には、心当たりを一緒になって捜し、先に見つけてしまった場合、自分の手柄にすると「やっぱり盗っていた」と疑われてしまいます。そこでわざとそこに誘導するようにしてご本人が見つけたようにすると良いと思います。またお金の数え間違いや思い違いやらで「お金を取られた」と言われる際は、少額の場合は「さっき急に支払うことがあって悪かったけれど無断で借りました」といって取りあえずはその場を取り繕うことも上手なやり方です。

 それからパーキンソン病などでみられる幻視・幻覚などについては、明らかにおかしいと思ってもご本人は正しく本気で「そのカーテンの後ろに人がいて私をねらっている」などと怖がっておられます。「そんなおかしなことはありえない」と頭ごなしに否定するのではなく「まだ居るかどうか私も捜しましょう」といって実際に確認して「居たけどもう逃げたみたいですよ」、「私も一緒にいるから大丈夫ですよ」と安心させ、可能ならカーテンを換えるなどして環境を換えることが有効なこともあります。

 その他、以前に比べ怒りやすくなるなど感情をコントロール出来なくなってきた場合には、介護する側もそれにつられないようにする必要がありますし、また失禁などでご本人の羞恥心や自尊心を損なうような場合には介護側は平静を装う必要があります。とにかく責めたり否定をしないでその人の立場を考え、その人のいるその人独自の世界を理解してあげ、それになるべく合わせることが基本だと思います。

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