パーキンソン病について②

2009.02.09 放送より

 この前はパーキンソン病の症状についてお話しいたしましたので,今回は診断と治療について説明したいと思います.まず始めにパーキンソン病の症状についてもう1度簡単にお話ししたいと思います.パーキンソン病は錐体外路系という神経組織が主に障害される神経難病であり,従来は振戦・筋強剛・無動といった3大運動症状が目立ち,仮面様顔貌,小声,小字症,見かけ上の筋力低下や身体の硬さ,起立・歩行障害(前屈みで小歩,腕振りの低下)などが見られ,さらにこれに遅れて加わる姿勢保持反射の障害などによってすくみ,突進現象,易転倒性,寝返り困難などが見られるようになります.

このような有名な運動症状に加えて,非運動症状として便秘や起立性低血圧などの自律神経症状,幻覚,抑うつ,認知症などの精神症状,さらには嗅覚障害,睡眠障害,体重減少,痛みや痺れなどの感覚障害,易疲労性など実にさまざまな症状がみられ,数年前からは単なる錐体外路疾患というよりむしろ全身性疾患として捉えられるようになってきております.

 さてパーキンソン病はこのようにさまざまな症状を呈する疾患ではありますが,その診断で重要なのはやはり3大主徴,すなわち振戦,筋強剛,無動であります.通常は1側の手か足の安静時振戦で発症することが約6-7割と最も多く,これに筋強剛や無動なども伴っておればパーキンソン症状があるということになります.ただし,振戦は全経過を通じても8-9割にしか見られませんので残りの1-2割の方は振戦が見られないということになります.すなわち少なくとも筋強剛と無動を認めればパーキンソン病である可能性を考えて良いということになります.そしてそのような場合,次に病歴や診察,さらには頭部MRIなどの検査によって脳血管性や薬剤性など他の原因によって2次的に引き起こされるパーキンソン症候群を否定いたします.

それからさらにパーキンソン症状を示すもののパーキンソン病とは異なる神経変性疾患である進行性核上性麻痺や大脳皮質基底核変性症といったパーキンソン病関連疾患を鑑別いたします.これらは,元々はパーキンソン病に含まれておりましたが,研究の結果,病因が異なることが分かって,現在では別の疾患として分離されていったものであり,パーキンソン症状以外に眼球運動障害,失語や失行などの高次脳障害,さらにはより強い認知症を伴うこともあり,症状的にもパーキンソン病とは少し異なっておりますが,それに加えてパーキンソン病にとって1番よく効く薬であるL-ドーパがパーキンソン病のようには効きにくいという特徴があります.

それでは次にパーキンソン病の治療についてお話しいたしますが,その前に治療に関係があるのでパーキンソン病の病態について少しだけお話いたします.ただ今,パーキンソン病にはL-ドーパが1番よく効く薬剤であると申しましたが,それはこの疾患では中脳の黒質という部分にあるメラニン含有神経細胞が選択的に障害されており,その神経細胞が神経伝達物質であるドパミンを作れなくなり,その結果,線条体という部分がドパミン不足となって運動症状をきたすことが知られております.従いましてこの病気の治療は,線条体のドパミン不足を補うことが基本となります.そしてL-ドーパはこのドパミンの原材料であるというわけです.

それではまずパーキンソン病と診断がついたとしていつから治療するかでありますが,これに関しては従来は診断されてもすぐというのではなく,日常生活に不便を感じるようになってからとされていました.従いまして年齢や仕事の有無やその内容など各個人によってそれぞれ治療開始時期が異なるとされていました.それでも大体はYahrの病期分類による中等度進行の3度前後に開始することが多いように思います.ところが最近,治療薬の中のドパミン受容体刺激薬に神経保護作用がある可能性が報告されるようになり,今後は診断され次第すぐ治療を開始するようにと治療指針が変更されるかもしれません.

そしてそれからどの薬剤で治療を開始するかでありますが,これは年齢で大きく分けられております.すなわち70歳以下の比較的若年で認知症のない方は,原則としてまずドパミン受容体刺激薬から始め,効果が減弱してきたらL-ドーパを追加するようにし,70歳以上の方や認知症のある方では初めからL-ドーパで治療するようにと治療指針では勧められております.そして手術はL-ドーパが有効であるものの副作用その他で薬剤だけではどうしても治療困難となった比較的若年の方に対して行います.現在,遺伝子導入を含めた細胞移植術はまだまだ実用化されてなく,ペースメーカの電極を利用した大脳深部刺激術が現在の手術療法の主流であります.

 パーキンソン病ではL-ドーパというよく効く薬剤があるおかげで,治療開始後,5年以上は症状も安定してADLも低下することが少なく,さらにその後も薬の調整やリハビリなどによって天寿を全うできるといわれておりますので,安心して病気とつきあって前向きに療養されてゆくことが大切であると思います.

 

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