睡眠時無呼吸症候群について

2010.04.04 放送より

 近年,交通事故,過労死,夜間の突然死などとの関連が指摘されたり,ストレスから高血圧や糖尿病などの生活習慣病の増悪因子とみなされたり,慢性的な酸素不足を解消するために赤血球が著しく増加して多血症となり血液が粘くなったり,心臓に負担がかかったりなどして,狭心症,心筋梗塞さらに脳梗塞などを合併しやすいとされております睡眠時無呼吸症候群についてお話ししたいと思います.

 まず,睡眠時無呼吸症候群を説明するために,無呼吸の定義から申しますと,無呼吸とは呼吸が10秒以上止まった状態をいいます.また通常の呼吸の半分以下の換気量になった状態が10秒以上続く状態を低呼吸といいます.そして1晩に無呼吸や低呼吸がどのくらい起こったかを評価するために,1晩に起こった無呼吸および低呼吸の回数を1晩の総睡眠時間で割ります.これを無呼吸低呼吸指数(AHI)といいます.そして無呼吸および低呼吸が合計で1時間に5回以上起こる場合を睡眠時無呼吸症候群といたします.すなわち例えば,7時間眠ったとして1晩に無呼吸と低呼吸が35回以上起これば睡眠時無呼吸症候群と診断されるわけです.本症候群は,赤ちゃんからお年寄りまでの幅広い年齢層にみられますが,特に中年以降の男性に多く,その2~4%にみられるとされており,さらに近年増加傾向にあると考えられています.

 次に,睡眠時無呼吸症候群の症状ですが,その名のとおり無呼吸が主症状であります.これには,中枢型,閉塞型,混合型の3種類があります.そしてまずは中枢型ですが,これは脳内の呼吸中枢の活動が停止あるいは活動が上手く伝わらなくなり,呼吸筋の運動が止まってしまう無呼吸の型をいいます.中枢型の無呼吸は, 脊髄小脳変性症など神経変性疾患や脳卒中など器質性脳障害や心不全や不整脈などの循環器疾患などの際にみられることが多いとされています.中枢性睡眠時無呼吸の特徴として,無呼吸は1晩を通してほぼ均等に出現するといわれております.

 次に,閉塞型の無呼吸ですが,これは胸と腹の呼吸運動は保たれますが,鼻腔,咽頭,喉頭といった空気の通り道である上気道の一部に閉塞が起こるため,口や鼻からの換気が停止する無呼吸の型をいいます.無呼吸は一般に無呼吸の出現率の高い例ではノンREMの浅い睡眠期によくみられ,出現率の低い例ではREM期に比較的多発するとの報告があります.閉塞型睡眠時無呼吸を引き起こす疾患としては,鼻中隔弯曲症,鼻アレルギー性鼻炎,副鼻腔炎など鼻や副鼻腔の疾患,扁桃肥大などの咽頭疾患そして肥満などが知られております.そしてこれらの疾患においては,起きている時からすでに上気道の狭窄を起こす扁桃肥大や舌根沈下などが伴っており,睡眠によりさらに上気道の閉塞が増強することにより無呼吸となると考えられています.

 さらに,無呼吸の始めは中枢型で,その後,閉塞型に移行する混合型というものもあります.それから無呼吸以外の症状としては,無呼吸が終わって呼吸が再開した時の強烈ないびきや手足を大きく動かす運動などがみられることがあります.また夜間の無呼吸に伴う睡眠不足に伴う過眠や昼間の傾眠(要するに眠たくてたまらない状態),朝起きたときの酸素不足に伴う頭痛,1晩中口を開けて呼吸していたことによる口の中の乾燥やのどの痛みなどがあります.そしてこのような状態が長年続くことにより,疲れ易さのあまり性格が怒りっぽくなったり無頓着となったり,あるいは記憶力が低下して,仕事や学業などに支障をきたすこともみられます.

 次に治療でありますが,これは重症度により異なってきます.まずはAHIが5-15程度の軽症例では,日常生活にあまり支障をきたしませんので,横向きで寝て気道の閉塞を防ぐとか,喉頭疾患の治療や肥満があればその改善を行うなどで対応いたします.次にAHIが15-30の中等度の睡眠時無呼吸の場合には,日中の傾眠や高血圧・糖尿病の合併やその増悪などが見られるようになります.それらの疾患の治療とともに舌根の沈下を防ぐマウスピースやCPAPといって持続的に空気を気道に送り込むことにより無呼吸を防いでくれる呼吸補助装置をつけて眠る必要が出てくる場合も起こります.それからAHIが30以上の重症例では日中の傾眠や易疲労感などで日常生活に不便を感じたり,活動性の低下をきたします.特にAHIが45以上の例では事故や合併症などによる死亡率の上昇がみられます.このような重症例ではCPAPによる治療が必須となります.

 夜間の突然死も勿論怖いのですが,本症候群に長年かかっているうちに,生活習慣病を併発あるいは増悪する危険性が高くなります(実際,米国での推計では睡眠時無呼吸症候群の人の高血圧の罹患率は2倍,心疾患は3倍,脳血管障害は4倍といわれております)ので,疑いがある方は精密検査(といいましても1晩眠るだけで簡単です)を,ぜひ受けられることをお勧めいたします.

 

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