脳の左右差について

2010.11.28 放送より

 スポーツでは利き手によって有利なものと不利なものがあります.そもそも人間の体はほぼ左右対称ですが,脳は左右に分かれていて,左右それぞれで異なる働きをしております.中でも運動神経や感覚神経では,左右の手足がそれぞれ反対側の脳によって支配されていることは皆様よくご存じのことと思います.そこで本日は,脳の左右差についてお話ししたいと思います.

 まず始めに脳の左右差について語る前に,脳そのものの構造からご説明いたします.脳は体重の約2%位を占め,重さは男性で1350-1500g,女性で1200-1250gといわれておりますが,体重との相関はないようです.脳の中には約3000億個の細胞があり,そのうち神経細胞が300億個で残りは主にその維持に関係するグリア細胞であるといわれております.また脳は脊髄とともに中枢神経系を構成しており,大脳,脳幹,小脳と大きく3つに分けられます.これらの中で最も大きいのは脳全体の約80%を占める大脳で,大脳には大脳皮質と大脳白質さらに大脳基底核や視床などがあります.

大脳皮質には主に神経細胞があり,その数は140億個ともいわれております.それから大脳白質は神経線維が縦横無尽に走っており,皮質同士のあるいは皮質と大脳基底核や視床などの神経細胞が連絡を取り合ったり,あるいは遠く脊髄まで線維連絡をしております.また大脳は左右の大脳半球に,小脳は左右の小脳半球と小脳虫部にさらに分かれます.脳は非常に柔らかい組織であり,表面を髄膜(軟膜,クモ膜,硬膜)という三層性の膜で被われており,このうち軟膜とクモ膜の間であるクモ膜下腔は脳脊髄液というリンパ液のような無色透明な液体で満たされております.

 それでは脳の左右差についてお話ししていきますが,脳で左右差がはっきりしているのは,やはり大脳であります.大脳は左右の半球に分かれておりますが,さらに前頭葉,頭頂葉,側頭葉,後頭葉と分かれて,機能を分担しております.そこでその機能について説明しますと,まず前頭葉ですが,ここは人類において特に発達しており,中心前回には運動野という体を動かす運動神経の中枢,前頭眼野には両眼を水平に動かす眼球運動の中枢,下前頭回にはBroca中枢という運動性言語の中枢などがあるほか,物事を理解して問題に対する解決策を考えたりする部位でもあり,さらに前頭葉の前部や眼窩面は人格や意志など精神機能に関係しており,ここが障害されますと感情を抑制することが出来なくなります.それから頭頂葉には中心後回という前頭葉のすぐ後ろの部分に運動野と向かい合うように体性感覚野があり,全身の触覚や温痛覚などの感覚の中枢があります.このほかには感覚中枢を補足する補足感覚野などがあり,頭頂葉では連合野といっていろいろな種類の情報を統合しております.

次に側頭葉ですが,ここには横側頭回という場所に聴覚の中枢である聴覚野があるほか,言語音の認知を司る感覚性言語中枢であるWernicke中枢が上側頭回後部にあります.また記憶で有名な海馬や扁桃体という部位が側頭葉の下内側にあります.それから後頭葉ですが,ここには視覚に関係した中枢が存在しています.そのほか大脳基底核や視床には多くの神経細胞が存在しており,大脳基底核は錐体外路系に属して錐体路と呼ばれる運動神経の補佐をしていたり,視床は各種感覚や運動情報の中継をしたり意識に関係したりしております.

以上,いろいろと説明しましたが,これらの中で左右両側にそれぞれ脳に存在して交叉性に反対側を支配しているものとしては運動神経や感覚神経,視覚や聴覚などであります.これに対して左右どちらかだけに局在しているものとしては,言語中枢が有名であります.これは利き手が右利きの人の90%以上で左側に存在し,左利きの人でも約60%が左側に存在しているようです.そして左利きの人は約10%といわれておりますので,言語中枢は左の大脳半球に90%以上存在することになります.

一般に言語中枢のある側を優位半球と呼ぶようですので,優位半球といえば左半球を指すことがほとんどということになります.優位半球にはこのほか計算の中枢やいろいろなことを認識したり,いろいろな行為(ただし服を着たり脱いだりする行為を除く)を行うための中枢などがあり,このため左脳は主に論理的な思考を受け持っているなどといわれております.これに対して多くの人の右半球(=劣位半球)には空間を認識したり,知っている人の顔を認識したりする中枢などがあり,このため右脳は感性的な処理を得意とするといわれております.よく左脳人間,右脳人間などといわれたりしておりますが,実際には左右が独立して活動しているわけではなく,脳梁という太い連絡線維により対側との連携が行われております.

 脳は神経細胞という非常に機能の高い細胞の集合体でありますが,その機能を発揮するためには線維連絡が重要です.使うほどこの連絡は高度に発達しますので脳は鍛えるものだと言えるようです.

 

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