自動車運転をしてはいけない疾患について

2015.05.03 放送より

 人口の高齢化に伴い高齢者の事故が増えてきたことや危険ドラッグによる暴走事故が相次いだことなどにより,平成26年6月1日付けで道路交通法が1部改正され施行されました.その改正点のうちの1つは自動車免許証の取得や更新に際して一定の病気や薬の内服が無いか公安委員会は質問票を交付することができ,それに対して虚偽の記載や報告をすると1年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金という罰則が設けられたことです.また医師は診察した患者さんが一定の病気等に該当すると認知し,その人が免許を受けていると知ったときには,守秘義務とは別に診察結果を任意で届け出ることが出来るようになりました.そしてさらに公安委員会は一定の病気等にかかっていると疑われるものに対して自動車免許の効力を一時的に停止することが出来るようになりました.

 さてその一定の病気ですが,統合失調症,認知症,躁うつ病などの精神的障害が問題となる疾患,てんかん,再発性の失神,低血糖症,睡眠時無呼吸症候群など重度の睡眠障害といった突然意識障害をきたす疾患などが該当いたします.このうち統合失調症に関しましては,自動車等の安全な運転に必要な認知,予測,判断または操作のいずれかに係る能力を欠くこととなる恐れがある場合は運転禁止となり,そのような症状を呈しないものは除かれます.またてんかんの場合は,発作が再発する恐れがないもの,発作が再発しても意識障害および運動障害がもたらされないもの,発作が睡眠中にのみ再発するものは除かれます.そしてそううつ病の場合も自動車等の安全な運転に必要な認知,予測,判断または操作のいずれかに係る能力を欠くこととなる恐れがある場合に運転が禁止ということになります.また認知症の場合は,自動車等の安全な運転に必要な認知,予測,判断などの能力が進行性に損なわれていきますから,原則として運転は禁止と言うことになりますが,MCIと言われる軽度認知障害(記憶障害の自覚があり,他覚的な検査でもそれが認められる,日常生活動作は正常で全般的認知機能も正常であり認知症では無い,しかし年に約10%は認知症へと移行してゆく)のように境界状態あるいは予備軍とも言われる状態の場合をどう考えるかという問題や認知症の場合,医師から見て運転できる状態ではなくそれを伝えたにも関わらず、運転をやめない,あるいは運転していることを隠されるという問題があります.そのような時には、本人の同意なく医師は公安委員会に届け出る義務が生じてまいりました.

 それから疾患以外にも内服していると眠気を催したり,意識障害や視力障害をきたして運転に支障をきたす薬剤も原則運転禁止と言われております.それらの中には眠気をきたすものとして睡眠薬や抗不安薬,非麦角系ドパミン受容体アゴニストなどの抗パーキンソン病薬,消炎鎮痛剤や疼痛治療薬,抗てんかん薬,アレルギーなどに用いる抗ヒスタミン薬などが有ります.また瞳孔を散瞳させるなどして視力障害をきたすような薬剤として点眼薬,鎮痙・鎮痛薬(腹痛の際に使用),1部の抗真菌剤などがあります.そして病院などで処方される薬剤以外にも薬局・薬店などで市販されているお薬(例えば風邪薬)も含まれますので,注意が必要です.こう言ってみると予想以上にお薬も危険と言うことになりますが,例えば睡眠薬などは不眠症の人にとっては,飲まなければ夜間不眠となって日中傾眠をきたしてかえって危険になるかも知れず,一概に飲んだら絶対駄目とも言い切れないのが現状です.

 以上が今回の道路交通法の改正からみた注意点ですが,実際には眠気や意識障害,認知症以外にも運動能力に障害をきたすような疾患も注意が必要かと思われます.例えば,パーキンソン病ですが,この病気は50歳代から60歳代で発症することが多いのですが,先ほどお話ししました薬の問題だけで無く,運転能力そのものにも病気の影響が出てまいります.すなわち振戦,筋固縮,無動という3大主徴のうち,振戦はさほど影響は無いかと思いますが,残りの筋固縮や無動は筋肉が強ばって手足が動かしにくくなるため運転に必要な筋力やとっさの時のブレーキ操作(素早くアクセルを離して急ブレーキを踏む)などには影響があると思います.また病気の進行に伴って体幹機能の障害も見られるようになりますが,車をバックさせたりする際にはこれにより支障が出てくるかも知れません.とにかく病気が軽いと普段の運転には支障は無いかも知れませんが,車は1台だけ単独で走るわけではありませんので,急な飛び出しや進路変更など予測出来ない事態に対して予定外の操作を反射的に行うことにいつの間にか支障をきたしているかも知れません.

 伊月病院では,ドライバーテストステーション(DTS)という自動車運転評価の機械やセイフティーナビという自動車運転シュミレータを用いて,パーキンソン病はもちろん筋力低下をきたす疾患や高齢者の方に対して,運転能力の評価とその能力に応じたリハビリテーションを始めております.まだまだなじみが無いのですが,徳島県では自家用車の運転は生活に必要欠くべからざるものであり,より具体的な機能訓練として今後確立してゆきたいと考えております.

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