サルコペニアについて

2016.03.20 放送より

 最近,ちょくちょく耳にすることがあるかも知れませんが,サルコペニアってご存じですか?この言葉は筋肉を意味するギリシア語の「サルコ」と減少を表す「ペニア」の2つをくっつけた造語です.すなわち1989年にRosenbergという人によって「加齢による筋肉量減少」を意味する用語として提唱されました.そして筋肉には骨格筋と平滑筋,心筋などありますが,当初は骨格筋の筋肉量の減少と定義されておりましたが,加齢によらずとも寝たきり等で起こる廃用症候群などでも二次的に筋肉がやせたりすることなどから,範囲を広げて筋肉量の減少だけでなく筋力低下や身体機能の低下(起立や歩行の障害)などもサルコペニアの中に含まれるようになってきております.そして2010年にヨーロッパのワーキンググループ(EWGSOP)によって,サルコペニアとは進行性かつ全身性の筋肉量と筋力の減少によって特徴付けられる症候群で,身体機能障害,生活の質(QOL)の低下,死のリスクを伴うものであると定義づけられております.

 そもそも筋肉は加齢とともに筋肉を構成する筋線維の数が減少し,筋線維自体も萎縮してしまいます.これにより筋肉量は低下してゆき,成人では体重の約40%を占めていた筋肉量が加齢とともに減少し,一般には40歳頃からは年に0.5%ずつ減少し,特に65歳以降には減少率が増大して最終的に80歳までに30%から40%は低下するといわれております.これに対して加齢による筋力の変化は,筋肉量の変化よりも遅れて50歳までは何とか維持され,50歳から70歳では10年間に15%ずつ減少するといわれています.サルコペニアの診断にはこの筋肉量の減少とともに筋力の低下あるいは身体機能の低下を証明する必要があります.このうち筋肉量は正確にはCTやMRI検査で測定することが出来ますが,最近では簡易的に体の中の電気抵抗を測定することにより,家庭用の体重計でも推測することが出来るようになりました.大体,健康若年者の平均値より2標準偏差をこえて低いと筋肉量が減少していると言われます.次に筋力の評価には,本来なら上肢よりも下肢(筋肉全体の70%が脚にある)の筋力測定がよいのですが,簡便には握力の測定を用います.大体男性では25kg以下,女性では20kg以下を筋力低下としているようです.それから身体機能の評価には歩行速度の測定を用いることが推奨されております.若年男性の平均歩行速度は1.5~1.6m/秒といわれており,この約半分の0.8m/秒以下になると身体能力は低下していると考えられております.現在,サルコペニアであると考えられる人は,60~70歳で5~13%,80歳を超えると11~50%におよぶといわれております.

 さてそのサルコペニアですが,症候群でありますから,いろいろなことで起こるのです,以下のように分類されております.まずが原発性のもの,これは加齢性サルコペニアとも言われ,最初に言われ始めたもので,加齢以外に特に明らかな原因が認められないものであり,これに対して2次性サルコペニアには,身体活動性サルコペニアといいましてベッド上での安静,運動しない生活スタイル,無重力状態などが原因となり得るもの,疾患性サルコペニアといいまして重症臓器不全(心臓,肺,肝臓,腎臓,脳),炎症性疾患,悪性腫瘍や内分泌疾患などに付随するもの,それから栄養性サルコペニアといいまして食物の吸収不良,胃腸疾患,および食欲不振をきたす薬剤の使用などに伴うエネルギー摂取不足やタンパク質の摂取量不足に起因するものなどがあります.

 さてサルコペニアの治療と予防ですが,まず加齢性のものは筋肉量を維持,増強してゆくためにまずは適切な運動とアミノ酸補給が重要になります.運動としましてはウォーキングを中心とした有酸素運動があげられます.筋肉は使わないと萎縮してゆきますので普段の日常的な生活ではあまり脚を高く上げるなどの動作はしないものと思われます.脚を上げる運動には大腿4頭筋という太ももの大きな筋肉を使いますが,この筋肉は使わないと衰えやすいとともに,立ち上がる動作に重要であります.これを鍛えるためにはスクワットなどにより筋肉に負荷をかけて何度も繰り返す運動が効果的です.またふくらはぎの筋肉も起立した時に身体のバランスを保つのに体幹の筋肉とともに重要です.脚は第2の心臓とも言われておりますので,こういった脚の筋肉を鍛えておくことは血流動態を維持するのにも有用です.それから2次性のサルコペニアですが,各種臓器の疾患,炎症や悪性疾患に対してはその治療が湯煎することは勿論ですが,中でも糖尿病はその悪化によってインスリンの効果不足から筋肉を分解して糖を新生することにより筋肉量が減少をきたしますので薬物療法や食事療法だけでなく,運動療法も平行して行うことが重要です.

 最近ではさらにサルコペニアに加えて,加齢にともなう筋肉,骨,関節の体の3つの部位に支障をきたして日常生活が困難となり,起立・歩行障害や易転倒性をきたして,要介護・寝たきりになる現象をロコモティブシンドロームと名付け,これらの予防対策が重要であるといわれてきております.

 

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