フレイルについて

2016.07.24 放送より

 以前に全身性に筋肉の量が減少して筋力が次第に低下してゆくサルコペニアについてお話ししましたが,今回はそれと関連のあるフレイルについてお話ししたいと思います.サルコペニアは筋肉をあらわすサルコという言葉と減少を示すペニアの2つをくっつけた造語でしたが,フレイルの方は,frailtyという虚弱あるいは脆弱という意味の英語に由来した日本語です.frailtyは,欧米ではもう20年以上前から使われているそうですが,日本では,健常な状態と要介護状態の中間に当たるものとして2014年5月に日本老年医学会によって提唱されております.

 さてそのフレイルの定義ですが,2001年のFriedという研究者の提唱したものが用いられることが多いようで,1.体重減少(意図した食事療法なしで年間4.5kgあるいは5%以上の体重減少),2.何をするのも面倒で何かを始めることが出来ないような疲れやすさを週に3-4回以上自覚すること,3.活動量の低下(消費カロリーが1週間に男性では383kcal,女性は270kcal未満),4.標準より20%以上の歩行速度の低下,5.標準より20%以上の筋力低下,の5項目のうち3つ以上が該当すればフレイル,1か2でフレイルの前段階とされています.このようにサルコペニアが筋力低下や筋肉量の減少といった筋肉の弱った状態を指しているのに対して,フレイルでは筋力低下や体重減少といった身体的な面だけでなく精神的な活力の低下も診断基準に含まれております.すなわちフレイルは身体だけでなく精神的にも活力が低下した状態であるといえます.そして愛知県で行われた疫学調査によりますと,脳血管障害などのない65歳以上の方の約11%にフレイルが見られたとのことですから,全国では約300万人になるとのことです.なお体重減少や易疲労感については,それらをきたすような基礎疾患が無いかどうか原因の精査を行い,がんや糖尿病,甲状腺などの内分泌疾患,膠原病,貧血,腎不全,心不全などの循環器疾患,COPDなどの呼吸器疾患,パーキンソン病や認知症などの神経疾患,うつ病などの有無をチェックしてそれらが直接的の原因となっていないかどうか,さらに薬の副作用も除外することが必要です.また筋力の評価については,サルコペニアの時にもお話ししましたように簡便に上肢の筋力評価には握力を,下肢の筋力の評価には歩行速度を測定します.すなわち握力では大体男性が25kg以下,女性が20kg以下を筋力低下とし,歩行速度については若年男性の平均歩行速度である1.5~1.6m/秒の約半分である0.8m/秒以下(6mの往復で15秒以上)で有意な低下とされております.

 それでは次にフレイルの状態になればどのようになってゆくかお話しします.フレイルでは7年間の死亡率が健常な人に比べて約3倍,身体能力の低下が約2倍という報告があります.また様々なストレスに対しても弱い状態になっていると言われております.すなわちストレスに対して抵抗力が弱くなれば,傷が治りにくくて化膿しやすかったり,風邪を引いただけでもふらついて転んで骨折をきたしたり,こじれて肺炎になりやすくなったり,MRSAなどの通常の体力のある人ではかからないような弱毒菌に対しても感染を起こしやすくなります.このようにフレイルに陥るとどんどんと悪い方へ悪い方へと向かっていきますが,早期に適切な対応が取れればフレイルの状態から脱して健常な状態に戻っていくことも可能です.そしてその方法ですが,高齢者では食欲が落ちていることが多いので,まずは蛋白質,ビタミン,ミネラルなどを含む食事を摂ることです.このうち蛋白質は,日本人の場合,高齢者では1日当たり体重1kgにつき0.8gが標準摂取量といわれていますが,サルコペニアがある場合,1.5g程度必要と言われています.また骨粗鬆症の予防のためにビタミンDやカルシウムを含んだ食事を意識して摂ることも必要です.ただし基礎疾患に糖尿病や高血圧などのある人の場合は,それらに対する食事療法も考慮しなければなりません.それから栄養摂取の次は運動です.ストレッチやウオーキングなどあまり循環器に負担をかけない運動で筋肉を鍛えて筋力や持久力をつけ身体の活動量を増やせるようにします.また抑うつ傾向や軽度認知障害の存在も活動性を落としてフレイルにつながる恐れがありますのでチェックしておく必要があります.さらに高齢者の場合,肺炎や腸炎などにより寝たきりを強いられてそれがわずかな期間でも体力がガクッと落ちることが考えられますので,インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンなど予防接種を受けることも意義があることかと思います.

 フレイルの状態の方は,健常な人に比べて要介護状態に陥る危険性が高いだけでなく,入院のリスクが高く,さらには生命予後も悪くなります.高齢者になりますと高血圧や糖尿病,高脂血症など複数の疾患を持ち,複数の薬剤を内服している方が多い傾向にありますので,これらの治療をきちんと行うことがまず重要でありますが,それだけでなく食事摂取不足や運動不足から起こってくるフレイルの状態を早期のうちに発見し早期に対応することによって要介護に至るのを予防して健康寿命を延ばすことができるのではないかと考えられております.

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