メニエル病について

2006.01.29 放送より

 最近、グルグルと回るめまいを訴える患者さんを何人か診察する機会がございましたので、今日は回転性のめまいをきたす疾患の代表としてメニエル病についてお話しいたします。

 そもそもめまいと言いましても大きく分けて真性めまい(vertigo)という回転性のめまいとめまい感(diziness)といって体がふわふわと揺れたりふらふらしたりする感じの非回転性のめまいの2つに分けられます。このうち回転性のめまいは、大体障害部位が決まっていて内耳の異常によって起こり、メニエル病、前庭神経炎、良性頭位性めまいなどでみられます。それに対して非回転性のめまいは、脳幹や小脳などの腫瘍や血管障害、脳髄膜炎などの感染症など脳の障害、むち打ち症や頸椎症などによる頚の疾患など神経系の異常でくるものに加えて、低血圧や高血圧など循環障害によるもの、貧血によるもの、各種ホルモンの異常によるもの、さらには心因性のものなどさまざまな原因でみられます。

 さてそれではメニエル病についてお話しいたします。メニエル病は19世紀の前半にフランス人の医師プロスパーメニエールによって報告された疾患です。この病気は回転性のめまい、耳鳴り、難聴を繰り返す病気で、その病因は、内耳の内リンパ水腫と言われておりますので、内耳について簡単に少しお話しいたします。内耳には中耳にある鼓膜から耳小骨という3つの小さな骨を伝わってきた音に関する情報(振動)を聴神経に伝える聴覚に関係した蝸牛という部分と体のバランス(平衡)を保つための部分である三半規管(体の傾き具合や回転を感ずる)と耳石(体にかかる加速度や重力を感ずる)があります。 三半規管と耳石の体の位置関係や動きに関する情報は前庭神経を介して脳幹、視床、大脳皮質へと伝えられてゆきます。そして三半規管の内部にはリンパ液が満たされており、身体が動く際にはこのリンパ液の流れが変わります。三半規管には3つの半円形の管があり、X軸、Y軸、Z軸のように互いに90度ずつの角度を保って存在しており、通常はそれによって体がどの方向に動いているかの情報を得ているわけです。メニエル病では、この三半規管のリンパ液があふれかえっており(内リンパ水腫)、このため体の位置関係の情報が混乱し、激しい回転性のめまいが生ずると考えられています。ちなみに耳石のずれで生ずるめまいが良性頭位性めまいです。

 次にメニエル病の診断基準を用いて症状について説明いたします。診断基準の1としてまず「回転性のめまい発作を反復すること」があげられます。めまいは一般に特別な誘因もなく出現し、嘔気や嘔吐を伴って数分から数時間持続します。発作中には眼振を伴うこともあり、また非回転性のこともあります。次に診断基準の2としては「耳鳴や難聴などの蝸牛症状が反復、消長すること」があげられます。 原則として片耳の耳鳴と難聴の両方またはいずれかがあり、その変動に伴ってめまい発作をきたしたり、耳の閉塞感や強い音に対して過敏性を訴えることが多いそうです。また聴力検査では著明な中・低音領域の変化がみられることが多いそうです。そして診断基準の3は「診断基準の1や2をきたすような中枢神経疾患やめまいと難聴を主訴とする他の疾患を除外できること」であります。 この各種疾患の除外のためには、神経学的診察、耳鼻科的診察、聴力検査や平衡機能検査、頭部MRIなどが必要であります。そして診断基準の1、2、3をすべて満たすものがメニエル病の確実例で、1と3または2と3を満たすもの、すなわち回転性めまいの反復例あるいは難聴や耳鳴の反復例で他の疾患が否定された場合にメニエル病の疑い例と診断することが出来ます。なお発作は数ヶ月から数年に1度の割で繰り返すようです。

 それでは次に治療についてお話しいたします。メニエル病では三半規管の中にリンパ液があふれた状態となっているわけですから急性期にはこれを取り除くことが有効です。このためにイソソルビドという利尿剤系統の薬を使ったり、メイロンという重曹の点滴をしたりしてリンパ水腫を改善する必要があります。そしてめまいのない発作間欠期には、内耳の神経細胞を護りその活動を改善する目的でビタミン剤や末梢血流改善剤が使われたり、ストレスを避けるために精神安定剤を使うこともあります。さらにめまい発作が激しく薬物療法ではうまくいかない場合や発作を繰り返し難聴が進んでゆくような時には、内リンパ嚢解放術と前庭神経切断術という手術による治療を行うこともあるそうです。

 なお突然、片側性の高度の難聴をきたしめまいも伴う疾患として突発性難聴があります。この疾患は1回きりの発作である点でメニエル病とは異なりますが、この病気の場合には、ステロイドホルモンや血管拡張剤などで治療をいたします。またこの病気は1/3は治りますが、1/3は回復するものの後遺障害が残り、残り1/3は治らないといわれていますので、メニエル病の初回発作時には耳鼻科できちんと診断を受ける必要があります。

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