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キアゲハ通信No.001-「キアゲハ」

2014.01.23 更新

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「キアゲハ」

院長 西田 善彦

  皆様,キアゲハという蝶をご存じですか? キアゲハは,普通によく見かけるアゲハチョウによく似ておりますが,ちょっと違います.実は,世界的にはキアゲハの方が普通種であり,アゲハチョウの方がまれなのです.キアゲハ(この呼び方は日本だけの和名)の学名(こちらが世界に通じる一般名)は,Papilio machaon hippocratesといいます.この名前の意味を説明しますと,まずPapilioはいわゆるアゲハチョウ属を示します.次のMachaon(マカーオーン)は,ギリシャ神話で医術の守護神とされているアスクレピオス(彼は死から人間を救うことのできた)の息子でトロイア戦争に外科医として従軍として活躍しました.そしてHippocrates(ヒポクラテス)は,紀元前460年頃から紀元前375年頃のギリシャの医者で,当時の医術を集大成し,医聖と讃えられました.“医の実践を許された私は,全生涯を人道に捧げる”ほか8箇条よりなる「ヒポクラテスの誓い」は,古今を通じ医師のモラルとして最高の指針とされてきました.つまり日本のキアゲハは,医師のシンボルとして世界で最も由緒正しい蝶なのです.

 私は,物心がついたときから蝶が好きで,高校生になっても作家でかつ精神科医でありさらに虫の好きな北杜夫氏に手紙を書いたり,日本蝶類図鑑(この編者の一人は医師)や蝶の学会である日本鱗翅学会の刊行物(この事務局は大阪の病院内にありました)を見たり読んだりしておりました.さらに医学部を卒業し,神経内科医となりましたが,神経内科の教授の中に3人も蝶の同好者がいたのも何かの因縁かもしれません.この連載を始めるに当たってそのタイトルとしてこの医師のシンボルとも言うべき蝶の名前を選びました.何回続くか分かりませんが,これから私の思いや考えを述べてゆきますので,よろしくお願い申し上げます.

( 院内広報誌「なんきんまめ No.28(2000.4)」に掲載)
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