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キアゲハ通信No.105-「リアルワールド」

2017.09.15 更新

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「リアルワールド

院長 西田 善彦

 リアルワールドと聞けば,皆様何を思いつかれますか?昨年7月下旬にリリースされ,今夏の1周年記念のイベントでヒット中のポケモンGoもゲームの世界を現実の世界へ融合させたという意味でリアルワールドと呼ばれています.でも今回は,薬の治験についてのお話です.

 薬の治験というのは,そもそも候補となる薬剤が果たしてその病気に有効かどうか,副作用はないかどうかなどを調べるために開発したメーカーが中心になって二重盲検試験などを用いて厳密な検討を行うものです.この二重盲検というのは薬を使う側の医師も被験者である患者さんもともに使用される薬剤が候補薬剤であるのか偽薬であるのか知らされず行う治験であり,薬に対する期待などによる薬剤効果の心理的な影響を排除することができ,より正確な判断ができると考えられています.また治験に参加する患者は厳密な参加基準で選ばれた上,候補薬剤か偽薬かは公平に振り分けられますので,統計的な検討もより厳密で正確に行うことができます.このようにして得られたデータを厚生労働省に提出して有用性が認められたら,薬と市販されることが認められるというわけです.

 さてこのようにして得られたデータですが,実は万能ではないといわれるようになってきました.すなわち治験では効果をはっきりさせるため限られた均一な患者さんばかりを選んで行われていますが,実臨床の現場(すなわちリアルワールド)では,患者さんは年齢,体格,罹病期間に重篤度,さらにはほかにも合併症があるかどうかなどさまざまで不均一です.そのため市販後に治験の時の百倍以上もの患者さんに実際に使用してみた結果を改めて解析して有効性を検討しようということになってきております.

 以前にもお話しましたように患者さんは一人一人違います.目の前の患者さんに何か違ったことや特別なことはないか「患者さんが先生」という言葉を忘れずに診療に当たりたいと思います.

 

(院内広報誌「なんきんまめ No.132(2017.9.15)」に掲載)
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