四十肩、五十肩について

2004.02.10 放送より

 まだまだ寒い日が続いております.本日は、肩の痛みの代表的疾患であり、私も悩んでおります四十肩あるいは五十肩についてお話しいたします.

 この病気は体をよく動かしている人よりむしろ机に座って仕事をしているような肩を使わない人の中で40歳を過ぎてから(50歳前後の人に多く)大体日本人の2~3割から多い統計では2/3の人に起こり、髪を整えたり、着替えをしたりする際、肩から上腕が痛くて手を前方や側方に挙げたり回したり背中に回したりすることがしにくくなります.


 これには肩関節周囲炎や癒着性関節包炎などいろいろな病態があるのですが、これらを一括して四十肩あるいは五十肩と呼んでいます.大きな外傷など特になく何かのはずみで急に痛くなり始めるのですが、発症初期には肩の違和感、肩から腕にかけて放散する自発痛、運動痛などが起こり、結構激しい痛みが大体2ヶ月くらい続きます.中には夜間や明け方に痛くて眠れない人もいるようです(疼痛期).その後慢性化して痛みは和らぐのですが、鈍い痛みは続き、痛くて肩を動かさないことにより肩を支えているいろいろな筋肉に拘縮がみられ肩関節の運動制限が起こってきます(拘縮期).その後自然に痛みはなくなり徐々に肩関節の可動域は改善し、一部には肩関節の運動制限が残るようですが、大体普通は、発症して1年で約半数の人が、2年で3/4の人が良くなります(緩解期).

 発症の原因ですが、これはよく分かっておりません.肩関節は人間が2本足で立って歩くようになった関係で自由に動かせることができ、その結果、関節自体は股関節などに比べて不安定であり、それを補うため多くの筋肉や靱帯などで支えられています.特に肩甲骨から出て上腕骨につく肩甲下筋、棘上筋、棘下筋、小円筋などの筋は上腕骨の頭部を帽子のように包み込んで腱板を作っています.

この腱板の作用は、肩関節を挙上させる時の支点になることと脱臼しないように肩関節を守ることです.五十肩は加齢によりこの腱板、靱帯、滑液包、軟骨などの弾性や滑らかさが損なわれ慢性炎症が生じて発症すると考えられたり、あるいは上腕筋の加齢性変化に伴って血行障害が起こり腱の変性や炎症が生じて発症するといわれております.


 先ほど五十肩にもいろいろあると言いましたが、五十肩は中年以降に発症し、目立った外傷歴がなく疼痛と可動域の制限があるというのが定義であり、狭義には肩関節周囲炎や癒着性関節包炎などで、広義には放置してはよくならず手術が必要となる腱板の断裂や石灰沈着性腱板炎なども含まれております.鑑別診断のためには、専門的診察に加え肩関節の単純X線検査、CT、MRI、超音波などの画像検査や血液検査、さらに必要なら関節鏡などの専門的検査が必要になる場合もあるかもしれません.

 治療は、痛みが主体の疼痛期と運動制限が主な拘縮期に分けて行います.始めに急性期である疼痛期ですが、まずは局所の安静が第一です.炎症が特に強い始めの数日は肩を冷やしますが、その後は冷やすとかえって痛みが増しますので、温熱療法として温湿布、ホットパック、入浴で温めることなどがよいと思います.


 寝る前にお風呂に入るのも効果的です.また寝ている間に寝返りをしたり肩が下がったりして痛くなるような人の場合は痛くならないように柔らかい枕やクッションなどを脇の下に入れるなどして肩が痛くないようなポジションを保つなどの工夫も有効です.そうやっていても痛みが強い時には、薬物療法として消炎鎮痛剤、筋弛緩剤、精神安定剤などの内服や肩や首にある末梢神経の神経ブロック(肩甲上神経ブロックなど)を行うこともあります.

 次に慢性期である拘縮期の治療ですが、この時期に痛がって肩の関節を動かさないでいると筋肉にも萎縮をきたし固まって可動域の制限が強くなってしまいます.関節が硬くならないようになるべく早いうちから先ほどお話ししました温熱療法や痛みが強い時には薬物療法なども併用して運動療法を行います.運動療法としては体を前方に90度くらい前屈みにして1kgくらいの重りを前後左右に振り子のように振る運動や肩を少しずつ前方や側方に挙上させ可動域を増やす運動などを行います.


 これらの運動は肩を温めた後にすることが効果的で、またあまり無理をしないこともポイントです.その他に医療機関でストレッチやマッサージをしてもらってもよいと思います.また予防としては、この病気は普段にはあまり運動していない人や長時間同じ姿勢で働いている人が、なりやすいといわれておりますので、ラジオ体操などを利用して腕や肩を普段から動かすことがよいとされております.また肩を冷やさないようにすることもよいと思います.

 五十肩はありふれた病気の1つですが、それと似た症状を示すものの中には別の疾患で放置していてはいけないものとして変形性頚椎症や必要な関節リウマチなどもみられますので、痛みが長引くようなら是非診察を受けるようにして下さい.

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