骨粗鬆症について

2003.03.26 放送より

 お葉書拝見させていただきました.現在70歳の女性で、約3年前までの35年間にわたり冷たい部屋の中で一日中座ってする仕事をされており、そのお仕事を辞められた直後から腰が曲がり始め、現在では手が地面に届きそうなほど曲がってしまったとのことです.どのような病気でどのように治療したらよいのかとのご質問です.

 背中が曲がって丸くなっている状態を円背といい、脊柱後彎症の1つです.この原因には先天性、炎症性、弛緩性、職業性、老人性、その他の疾患に伴うものなどいろいろありますが、この方の場合、年齢からみて先天性のものや幼児から学童期にかけての姿勢の悪さからくる弛緩性のものは考えにくいと思います.また炎症性のものとしては化膿性脊椎炎や結核菌による脊椎カリエスなどがありますが、これも経過から考えて考えにくいものと思われます.残る原因のうち職業性のものは座る仕事や重いものを背負う仕事をしている人に多いとされており、可能性はあるのですが、仕事を辞められてから始まったとのことでこれもやはり考えにくいようです.また関節リウマチなどによる変形性脊椎症やパーキンソン病などによる脊椎の後彎もそれぞれ特徴的な症状を伴いますのでそちらから診断されるものとおもいますので、残るものとしては、加齢に伴って起こる老人性のもので、その代表が骨粗鬆症と思われます.

 骨粗鬆症は、骨の中に含まれているカルシウムなどの量(骨量)が減り、骨の中の構造が壊れスカスカとなり、非常にもろく折れやすくなった状態をいいます.日本全体で1000万人の患者さんがいるといわれておりますが、圧倒的に女性に多い病気であり、特に閉経期以降に急増し、60歳代女性では2分の1、70歳代では3分の2、80歳代では実に80%以上にみられるとされています.しかし最近では無理なダイエットなどにより若年女性にまで広がっているという報告もあり注意を要します.そして普段は自覚症状が少なく、転んで手をついて手首(橈骨)や腕の付け根の骨(上腕骨)を折ったり、尻餅をついて大腿骨を骨折したりして気づかれることがあります.また背骨の変形としては転んだりしなくとも重いものを持ったりして少し余計な力を入れただけでも椎体骨の圧迫骨折などを起こしてしまうこともあります.また椎骨の変形が徐々に起こり背中の後彎とともに骨痛およびその周囲の筋肉痛による腰背部痛が生じることもあります.さらに全国で90万人はいるといわれている寝たきりの方の原因として脳血管障害、老衰に次いで第3位にあげられておりますので無視できない病気の1つです.

 それではどうして骨量が減少するのかご説明します.骨はすごく硬くて頑丈な組織であり、1度出来上がったら1生もののように思われがちですが、もともと重量を軽くするよう隙間だらけの構造ですし、他の組織と同様に新陳代謝を繰り返しています.すなわち骨は破骨細胞により古くなった骨を壊しながら(骨吸収、骨破壊)、骨芽細胞によって骨形成を行っています.この形成と吸収・破壊の絶妙なバランスが崩れ、吸収・破壊の方に傾いたとき骨量の減少が起き、骨粗鬆症へと進展してゆくというわけです.この骨を吸収・破壊へと傾けていく因子としては、加齢(各種ホルモンの分泌低下、胃腸や腎機能の低下)、女性の場合の閉経(エストロゲン分泌の激減)、カルシウム不足(カルシウム摂取不足は副甲状腺ホルモンによる骨吸収を促進)、ビタミンD不足、日光浴不足、運動不足、喫煙や飲酒(腸よりのカルシウム吸収の低下)、カフェインや食塩や糖分の摂りすぎ(尿中へのカルシウム排泄の増加)、ストレス(腸におけるカルシウム吸収の低下)などがあります.

 診断は、骨量を測定し低下を確認することですが、測り方によってばらつきがありますので同1施設の同じ条件下で経過を追うことが重要です.また癌の骨転移、多発性骨髄腫、副甲状腺機能亢進症などさまざまな疾患を除外するために血液検査を内科で受けられることも必要です.

 治療および予防としては、カルシウムを含んだ食品をたくさん食べること(通常の必要量は1日600mgであるが1000mg以上必要:牛乳、小魚、大豆製品、海草類など)、カルシウムの腸での吸収を良くするためビタミンDを多く含んだ食品を摂ること(マグロ、アジ、レバー、バター、卵など)、適度な運動をし、タバコ・酒・カフェインを摂りすぎないこと、ストレスを避けることなどに加え、薬剤としては骨形成を進めるものとしてカルシウム製剤、活性型のビタミンD製剤、ビタミンK2などが、骨吸収を抑えるものとしてはカルシトニン製剤、ビスフォスフォネート製剤などがあります.

 ご質問の方のご参考になったかどうかは分かりませんが、何か病気が隠れていないかどうか検査するためあるいは生活指導を受けるためにも、ぜひまず内科を受診されることをお勧めいたします.

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