64歳の関節リウマチの方のしびれについて

2006.01.22 放送より

 徳島市内の64歳の女性からのお便りで、この方は長年、関節リウマチといわれて指の朝のこわばりや手首、膝などの関節痛にお悩みであったところ、さらに最近になって右手の指先のしびれが出てきたとのことで、どういうことなのかお知りになりたいとの事です。それではまずは関節リウマチについてお話しし、さらにどの様なことが考えられるのかご説明いたします。

 始めにこの方がおかかりになっている関節リウマチについてご説明いたします。この病気は自己免疫性疾患である膠原病の1種で、関節の滑膜に自己抗体が出来て全身の関節を中心とした慢性の炎症をきたす疾患です。頻度は人口の0。5~1%といいますから全国に約50~100万人の方がおられることになり、1対3くらいの割で女性に多く、好発年齢は20~60歳となっています。

 症状としては、慢性に経過する関節の腫れや痛みが3つ以上の関節に見られ、特に手首や指の関節すなわち、中手指節関節(MCP)、近位指節関節(PIP)などの関節(遠位指節関節、DIPはまれ)に多く、左右対称性に腫れやすい傾向があります。また朝のこわばりといって朝起床時など長時間の休息の後に指などの関節のこわばりが30分から1時間以上にわたって見られることがあります。さらに頻度は約20%とそう多くないのですが、圧力を受けやすい関節の伸側に無痛性の皮下や腱鞘の肉芽腫性結節をこの病気の活動期に認めることがあります。関節の腫脹や疼痛は、長く続くと肩・肘・膝・股関節を始め、顎関節から頸椎環軸関節に至るまで全身の関節に及んでゆき関節が破壊されて関節可動域の制限や関節の変形をきたし、ADLが低下してゆきます。またリウマチの活動性が強いと全身倦怠感、微熱、食欲不振、体重減少、筋肉痛などの全身症状もみられます。さらに進行すれば関節外の症状として貧血、腎障害などもみられます。

 さてこのように怖い疾患ではありますが、早期に診断して活動性を抑える治療をしてなるべく病気が進まないようにします。診断には、先ほど述べました左右対称性の多発性関節炎や朝のこわばりなどの症状に加えまして、臨床検査としてリウマトイド因子、抗核抗体、免疫複合体、補体価などの膠原病関連の検査が有用です。またリウマチの炎症の程度をみる検査として、赤沈、CRP、γ-グロブリン、血清MMP-3などがあります。その他の検査として赤血球・白血球・血小板、尿検査、血液化学検査(肝・腎機能)、関節のレントゲン検査などもあります。

 そして治療ですが、大きく分けまして薬物療法、理学療法、手術とあります。通常は薬物療法を行いますが、最初に用いられますのは対症療法として非ステロイド性の消炎鎮痛剤でなるべく胃や腸にやさしく投与回数の少なくて済むものを用います。痛みや炎症反応の強い人には少量の副腎皮質ステロイドホルモンの内服治療を加えることもあります。

 またリウマチの活動性を抑える薬としては抗リウマチ薬があり、昔は金製剤などが用いられておりましたが、最近ではメソトレキセートという薬の少量投与が有効でよく使われるようになりました。さらにはインターフェロンなどの生物学的製剤も使用されるようになってきています。理学療法としては、温熱療法、補装具の装着、筋力の強化などのリハビリテーションなどがあります。また手術療法といたしましては、関節の滑膜切除術、人工関節置換術などがあります。

 さてそれでは、この方の右手のしびれについて考えてみたいと思います。まずしびれが神経のどの部位での障害によって起こっているかで考え方が違ってきます。末梢神経のごく限られた部位で障害された場合として手根管症候群などが関節リウマチではよく見られます。この場合、手首の腹側の手根管という手の筋肉の腱がたくさん通っている部分にアミロイドという物質が沈着したり、手首の関節が変形したりして、手根管を通っている正中神経が障害され、手掌の親指側を中心にしびれが見られひどくなると指の力も落ちてしまいます。

 かなりリウマチが進んでいる方の場合であれば、同様に首の骨に変形が起こって頸椎症として手や腕にしびれがきている可能性も考えられます。これらに対して、末梢神経を栄養している血管に炎症を起こしてその結果、その神経の支配領域にしびれをきたしている場合は、関節リウマチに血管炎を伴った悪性関節リウマチの可能性を考えなければなりません。悪性関節リウマチは、関節リウマチの0。6%にみられるといわれ、ピークは50歳代とやや高齢の方にみられます。多発性の関節炎に加え、発熱などの全身症状や全身の血管炎による間質性肺炎、胸膜炎、末梢神経炎、皮膚潰瘍などがみられます。治療としてはステロイド、免疫抑制剤、抗凝固剤などに加え、血漿交換療法を行うこともあり、特定疾患(いわゆる難病)に指定されています。

 以上、いろいろ考えられますので、まずはおかかりの先生とご相談の上、神経症状の評価のため必要とあらば、神経内科の受診も考慮して下さいますよう宜しくお願いいたします。

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