パーキンソンの最近の話題 症状について(その1)

2018.01.21 放送より

 パーキンソン病は,1817年に英国のジェームズ・パーキンソン医師によって記載された疾患です.ということで今年は,初めて報告されてから200周年ということになり,ずいぶん古くから知られていた病気ということになりますが,この10数年の間にずいぶんとその概念が変わってきましたので,そのことについて今回と次回の2回にわたりお話したいと思います.

 まずパーキンソン病と聞くと手足が振るえる病気とイメージされる方が多いと思います.実際に手足の振るえ(振戦)は初発症状の約60%を占めており,その振るえの特徴は安静時に見られるものでパーキンソン病以外では通常見られないものです.ところが振戦はすべてのパーキンソン病の患者さんにみられるというわけではなく全経過中で見られるのは約80-90%程度といわれています.そしてそのほかに重要な症状としては筋強剛(筋肉が持続的に緊張してこわばって力を抜きにくく,その結果,自由に動かしずらくなる)と無動があり,特に筋強剛はほぼ100%に見られます.これらの症状のうち,少なくとも2つがあればパーキンソン症状ありということでパーキンソン病を疑うことになります.そして病初期にはこれら3つの症状が目立ちますが,進行してきますと姿勢保持障害という薬の効きにくい厄介な症状が加わってきて,歩行時にすくんだり転倒しやすくなってしまいます.このように従来,パーキンソン病は,(振るえながら)動けなくなる病気として認識されてきました.ところが近年では,運動以外の非運動症状が注目されてきております.実はパーキンソン医師の報告時点ですでにさまざまな症状が記載されていたのですが,運動症状が特に目立つものですからあまり注目されておりませんでした.それが,より早くパーキンソン病を見つけ早期発見早期治療を目指すうち運動症状よりも早く出現している症状を詳しく調べるようになったのです.さてその非運動症状ですが,大きく分けて自律神経症状,精神症状,その他の症状があります.

 自律神経症状で最も有名なのは,便秘です.先ほど振戦は約80-90%の患者さんにみられると申しましたが,便秘もそれと同程度の頻度で見られ,しかもパーキンソン病の運動症状に先行すると考えられております.頻度は1000人に2人と低いのですが,便秘の人は便秘でない人の5倍くらいパーキンソン病になりやすいといわれております.それから起立性低血圧も重要な症状であり,臥位または座位から立位になって2分以内に最高血圧が20mmHg以上,最低血圧が10mmHg以上低下すれば陽性とされます.また起立性低血圧は,立ちくらみによる転倒の危険性だけではなく,脳への血流低下も招いて認知症発症に関連が深いとも言われています.それから発汗異常とか過活動膀胱による夜間頻尿なども見られます.そしてこれらの症状は,パーキンソン病の運動症状と同じくそれぞれの神経細胞へのα-シヌクレインの蓄積によるということが分かってきました.すなわち従来はこの神経細胞へのα-シヌクレインの蓄積は,中脳の黒質のメラニン含有神経細胞というドパミンを産生する神経細胞にレビー小体という名前の封入体として見られ,パーキンソン病の診断に重要な病理所見でした.それが便秘に対しては腸管の神経細胞,起立性低血圧に対しては心臓の交感神経に,発汗異常に対しては皮膚の汗腺の神経細胞にそれぞれ見つかりましたので,パーキンソン病はまさしく全身性の疾患で,運動症状もその1部分症状という位置づけに捉えた方がよいと考えられてきています.

 次に精神症状ですが,うつが約40%にみられるといわれ,これもまた運動症状に先行することがあり,うつの人は約4倍パーキンソン病にかかりやすいとも言われています.また最近非常に問題となっているのが,パーキンソン病の認知機能障害です.これはレビー小体型認知症というアルツハイマー型認知症の次に多いかもしれないという疾患が,パーキンソン病をその発症前後に伴い,認知症が主体でどんどん進行してゆくのに比べ,パーキンソン病自体でも経過とともに徐々にみられるようになり,80歳以上では何らかの障害がある方が約70%を占めるともいわれています.その症状の特徴は,脳内の神経細胞間の刺激の伝達がうまくいかなくなって理解力の低下や問題解決能力の低下といった前頭葉の機能が障害されてきます.その結果,以前には簡単にできていたことができにくくなったり,同時に複数のことができにくくなったりします.また症状の変動が特徴的で調子の良い時と悪い時の差が顕著になります.そのほか幻覚特に幻視や妄想などの精神症状も問題となります.

 その他の症状としては,体重減少や易疲労性,嗅覚障害,REM睡眠行動異常症(RBD)などがあります.このうち嗅覚障害は運動症状に対して4年くらい先行するといわれており,RBDは1年間に約4%の人がパーキンソン病になるとも言われていますが,睡眠の後半に現れ,夢を見たとおりに体が動いたり,声を上げてしまうという奇妙な病態であります.本日は,時間の関係で症状の解説まででとどめ,次回は診断と治療についてお話いたします.

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