緊張性頭痛について

2001.12.13 放送より

 前回は、日常よく起こる頭痛のうち片頭痛を取りあげましたが、今回は、片頭痛と並んで頭痛の中で最も多いといわれております緊張性頭痛を取りあげたいと思います.どれくらい多いかといいますと、頭痛自体が日本中で3000万人、そのうちの2200万人(15歳以上の国民の実に22%)が緊張性頭痛に罹っているといわれております.

 まず緊張性頭痛の症状ですが、後頭部から首筋にかけての圧迫感、頭重感がいつとはなしに始まり、だらだらと持続します.頭痛の部位は多くは両側性で頭全体におよぶこともあります.ちょうど「鉢巻きをしているようだ」とか「頭に重い石をのせられているようだ」とか表現されることがあり、片頭痛が突然拍動性に出現し雷雨のように例えられるのに対して、緊張性頭痛は梅雨空のようだと例えられることもあります.中高年に多く、女性にも男性にもみられ、頭痛の原因の7~8割を占めます.発作の頻度はさまざまで、月に数回程度から毎日続くこともあります.頭痛の程度は軽度ないし中程度であり、片頭痛と違い日常生活への影響は少なく、仕事は続けられることが出来ます.肩こりを伴うことが多いほか、眼の疲れやふらつき、さらに体のだるさなども伴うことがあります.

 病因は、頭や首のまわりの筋肉の張りや凝りであり、精神的な緊張などから起こる頭痛です.すなわち、ストレスにより頭や首のまわりの筋肉が緊張しすぎますと筋肉の中の血液の流れが悪くなり乳酸などの老廃物がたまります.老廃物がたまると筋肉が凝ってきて痛みを伴うようになります.頭痛が起こるとそれがさらにストレスとなって悪循環が起こり頭痛はひどくなってゆきます.ストレスとしては、精神的なものと身体的なものの両方があります.精神的なものには、仕事における緊張や不安、抑うつなどが長時間にわたることがあげられます.身体的なストレスとしては、姿勢の異常などによる首や頭のまわりの筋肉の過剰な緊張などがあげられます.この中には1日中コンピュータにむかっていることや寝る際に枕が高すぎることなども含まれています.そのほか首の骨や軟骨の異常、首の筋肉の筋力低下、顎関節症などの病気、さらに貧血や低血圧も筋肉の血流低下をきたしやすく緊張性頭痛の原因になっていることがあります.また鎮痛剤の乱用も原因となっていることがあり注意が必要です.

 次ぎに、治療法と予防法について述べます.まず治療法ですが、薬物療法とマッサージがあります.内服薬としては筋弛緩剤といって筋肉の凝りをほぐす薬やアスピリン、アセトアミノフェンを始め種々の非ステロイド性消炎鎮痛剤があります.しかしこれらに余りに頼っていますと痛みの閾値が下がって痛みに過敏となり頭痛を起こしやすくなったり、痛みを恐れるあまり薬をやめられなくなることがあり、慢性連日性頭痛といって頭痛が止まらなくなってしまう危険性があります.こうならないよう薬はほどほどにしなければなりません.

 一方、局所の塗り薬、貼り薬、マッサージなども効果があります.首、肩、背中などの筋肉に温湿布や暖めたタオルを当てたり、入浴時にシャワーで後頭部から首筋にかけて打たせ湯をしたりすることなどは、凝った筋肉をマッサージすることと並んで物理的な刺激により筋肉内の血流量を増加させ、痛みの原因となっている老廃物を取り除くことに役立ちます.次ぎに予防法ですが、まず精神的なストレスを避けることです.

 あまり根を詰めないようにすること、適度に休憩をいれること、散歩などの適度な運動やカラオケなどのレクリエーションなどを行うことにより気分転換をはかることが重要です.内服薬としては、軽い抗うつ薬や抗不安薬などを使うこともあります.また少量のアルコールは筋肉の血流改善の面からも効果があることもあります.それから肉体的なストレスを避けることとしては、前かがみのうつむき姿勢など同じ姿勢を取り続けないこと、首・肩・頭を回したり曲げたり伸ばしたりするストレッチ運動などを取り入れることなどが勧められます.また朝起きたときに頭痛のあるような方の場合、枕の高さや硬さなどをチェックしてみることも必要です.高すぎる枕は頚椎や後頚筋に負担をかけますので、出来ればはずすか低いものに変えてください.そのほか普段からバランスの良い食事をとったり、規則正しい生活を送るなどきちんとした健康管理を行うことも大切です.

 緊張性頭痛は近頃はやりの生活習慣病の1種であり、しかもその頻度は糖尿病よりもはるかに多いものです.生活習慣や環境を変えられたら1番良いのですがそうはゆかない場合が多いと思います.自分なりにリラックスしてストレスを避け、適度な運動を取り入れ、無理をしないで生活するよう心掛けてください.

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