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キアゲハ通信No.023-「バカの壁」

2014.04.14 更新

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「バカの壁」

院長 西田 善彦

 この何とも人を食ったような言葉は,平成15年のベストセラーにもなった本のタイトルで本年度の流行語大賞のベスト10にも選ばれました.著者の養老孟司先生は,東京大学医学部元教授でご専門は神経内科とも関連の深い脳の解剖学であります.しかも昆虫採集が趣味ということで世界中に虫採りに出かけたり子供たちを採集に連れ出したりしていると聞いたことがあり,興味をもってこの本を読んでみました.

 そもそも“バカの壁”とは,養老先生によれば“自分が知りたくないことや考えたくないことについて情報を遮断しようとして自主的に張りめぐらせている壁のことであり,それらは自分では気がついていない無意識のうちに築かれてしまっているようです.そしてともすればバカの壁に守られて自分の知識や考え方は,自分の常識として当たり前のこととなってしまいます.こうなると自分の知識は充分でありそれに基づいた考えは絶対的に正しいと錯覚してしまいます.この結果,人間の思考は停止し,それ以上賢くなろうとしなくなってしまいます.すなわちバカの壁は人間の成長を妨げます.養老先生がテレビのCFで言われているように”私は何も知らない.だから知りたい“と自分の知識の不完全さや考え方の不十分さをもっと謙虚に認め,素直に考えたり知ろうとする姿勢が大切だと思います.

 くしくも今年は以前に取り上げたことのある“なんでだろ~”も流行語大賞グランプリに選ばれました.バカの壁は誰にでもあります.この壁を取り払うため“なんでだろ~”と考えて,物事がうまくいってない時は勿論,うまく運んでいても“これで本当に良いのか?もう充分なのか?ほかにもっと正しいことはないのか?”と絶えず思うことが大切だと思います.今回は紙面の都合でこれだけにしますが,この本の中にはまだまだ養老先生の専門分野である“脳の話”や“苦痛の意味”など興味深い話がたくさんありますので,機会があればまたぜひ紹介したいと思います.

(院内広報誌「なんきんまめ No.50(2004.1.5)」に掲載)

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