パーキンソン病とパーキンソン症候群について

2003.11.17 放送より

 今日は、私の外来で患者さんからよく質問されますパーキンソン病とパーキンソン症候群の違いについてご説明いたします.

 パーキンソン病とは、そもそもジェームス・パーキンソンという名前の1755年生まれの英国のお医者さんが今から200年くらい前に報告された病気です.パーキンソン先生はこの名前を振戦麻痺という名前で発表されました.振戦とはふるえのことであり、麻痺は手足が動けなくなることです.つまりふるえながら動けなくなるという一見相反するような症状を併せ持った不思議な病気が存在することを本にされたのです.しかしこの病気はその当時ほとんど注目されず、半世紀以上も後に最も有名な神経内科医の1人であるフランスのシャルコー先生により見直され、パーキンソン病という名前で日の目をみたわけです.

 さて今日お話しするパーキンソン病とパーキンソン症候群との関係ですが、これは今お話ししましたパーキンソン病が先に確立されて、その後そのパーキンソン病と同じような症状を呈するいろいろな病気や状態が見つかってそれらをひっくるめてパーキンソン症候群としたというわけです.すなわちパーキンソン症候群とは1見パーキンソン病と同じように見えるのですが、細かく区別していけば異なるいろいろな病気やあるいはパーキンソン症状を1部分症状として合併しているさまざまな病気の集まりといえます.

 それではこれらの違いを理解していただくために、まず肝腎のパーキンソン病から説明いたします.この病気は神経難病の中でも群を抜いて多く有病率が人口10万人当たり100人と徳島県内でも800人以上の方がおられるはずなので、皆様ご存じの方も多いかと思います.50歳以上で発症することが多く年を取るほど有病率が上がりますのでやはり長生きの出来る女性に多い病気です.

 有名な安静時の振戦、筋固縮、無動の3大主徴、それに進行するとみられるようになる姿勢反射障害も加えて4大主徴があり、これらのうち少なくとも2つが有ればこの病気を疑います.そしてこの病気の原因は未だ不明なのですが、大脳の奥深いところにある中脳の黒質という部分の神経細胞が選択的に障害されております.この神経細胞はメラニン含有神経細胞といい、ドパミンという神経伝達物質を作っており、これが線条体という所に運ばれて運動神経の興奮をコントロールしています.すなわちパーキンソン病は脳内のドパミン不足により、手足が振えたり硬くなって動きにくくなっているのです.そのためドパミンを薬にして補充すると良く効くことが特徴の1つになります.また黒質は脳内のごく小さな部分にすぎませんので通常のMRIやCTでは異常が出ないことも診断上有用なもう1つの特徴になります.

 これに対してパーキンソン症候群には、同じように振戦、筋固縮、無動などのパーキンソン症状を呈しながら他に薬剤の副作用によるもの、脳血管障害のみられるもの、外傷性のもの、一酸化炭素中毒やマンガン中毒によるもの、脳炎後のものなど調べれば明らかに病気の原因が見つかるもの(=2次性パーキンソン症候群)とパーキンソン病と同じように病因が未だ不明で神経細胞がどんどん死んで脱落してゆく病気(=神経変性疾患)に属するものがあります.

 これらのパーキンソン症候群の中でパーキンソン病と同じく神経変性疾患に属するいわば親戚のような病気には幾つかありますが、この中の進行性核上性麻痺と大脳基底核変性症という2つにつきましては、この度今年の10月からの特定疾患制度の変更に伴い正式に特定疾患として公費負担の申請が出来るようになりました.

 これらは、勿論パーキンソン症状を呈しますが、加えて眼球運動障害、失語や失行などの高次脳障害、痴呆、それに幻覚・妄想といった精神症状を認めやすく、抗パーキンソン病薬も効きにくいことが特徴です.このことは、これらの病気ではパーキンソン病と比べて神経細胞の障害が大脳全般に及んでいるためと思われます.このためパーキンソン病では薬が良く効き、10年以上たっても働かれている方が大勢おられますが、このような神経変性疾患によるパーキンソン症候群では10年以内に寝たきりになられる方が多いようです.

 本日はパーキンソン病とパーキンソン症候群の違いについてお話ししてきましたが、要するにまずパーキンソン症状が有るかどうかで、もしあって薬が良く効きMRIやCTなどで異常がない場合はパーキンソン病だと思います.そして薬が余り効かず、画像検査でも脳の萎縮などの異常が有る場合がパーキンソン症候群ということになりますが、このような場合でもこの度の特定疾患制度の変更により難病指定が受けられる可能性がありますので、体の不自由な方で診断のはっきりされてない方は、ぜひ1度神経内科で診察してもらったら良いと思います.

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