帯状疱疹と帯状疱疹後神経痛について

2001.12.13 放送より

 今日は、寒い時期に特につらい帯状疱疹と帯状疱疹後の神経痛についてお話しいたします.そもそも帯状疱疹というのは、皮膚に痛みを伴った赤い発疹が肋間神経領域や三叉神経領域などに出て、それが帯状に拡がりながら2~3日のうちに水疱に変わり、さらに痛みを増し、ひどい時には発熱も伴うこともあるウイルス性の疾患です.

 その原因となるウイルスはヘルペスウイルスの1種で、子供の時に初感染として罹患すれば水痘(水ぼうそう)として経過し、抗体の力によって通常は身体の中からウイルスは追い出されてしまいます.

 しかし、このウイルスは神経細胞ととても仲良しであり、免疫力の及びにくい(いわば聖域のような)神経細胞組織の中に忍者のように隠れてしまうことが時にあります(=潜伏感染).すなわち体性神経節とよばれる神経細胞の中に普段は潜んでいて、そのまま一生同居することもあれば、身体が疲れたり弱ったりして抵抗力が落ちてきた時に突然暴れ出したときに帯状疱疹として再発するわけです.

 神経細胞の軸索に沿ってひろがり皮膚粘膜に水疱を形成しますので、神経が傷ついて刺すような非常に強い痛みを引き起こします.この痛みには自律神経である交感神経が関係しているといわれています.また神経線維が傷ついて麻痺も起こりますから、水疱が治ってくる頃には例えば普通では何ともないようなわずかな刺激に対してもぴりぴりとした異常な感覚を生ずることもあります.水疱の中にはウイルスがたくさん増殖していますので、破れた際、ほとんどの成人は昔、水痘にかかったことがあるためうつりませんが、水痘にかかったことのない小児は要注意です.水疱は1週間から10日間ぐらい増え続け、破れてビランとなりやがて乾いてかさぶたになります.その後約1ヶ月でかさぶたの下に新しい皮膚ができ、かさぶたがとれて多少の水疱の跡が残ることもありますが、大体は跡もあまり目立たず治ります.普通この頃にはほとんど痛みは気にならなくなることが多いのですが、年齢が高くなるほど痛みが残りやすくなり、特に60歳以上の方では約半数の方に帯状疱疹後神経痛として3ヶ月以上、人によっては一生痛みが残ることもあります.また水疱の出現する場所によっては、例えば目の周囲に水疱が出現すると角膜炎を併発したり、外耳道の中に出現するとハント症候群といって難治性の顔面神経麻痺を起こすことがありますので要注意です.

 診断については、前駆症状として発疹の出る前に神経痛様の痛みが7~10日間ほど続くことがあり、肋間神経痛、三叉神経痛、坐骨神経痛などと診断されてしまうこともあります.典型的な水疱が出現すれば診断は容易となりますが、できれば赤い発疹のうちに診断を受けて抗ウイルス剤などの治療が開始されることが望ましいと思われます.また確定診断には水痘・帯状疱疹ウイルスの抗体価の測定などが利用されます.さらに忘れてはならないことは、身体の抵抗力が落ちてウイルスが再燃したわけですから、体の中にガン、膠原病、糖尿病、肝臓病や腎臓病などが隠れていないかどうか全身のチェックが必要です.

 治療としては、まずアシクロビルという抗ウイルス剤を出来るだけ早期に点滴注射あるいは経口剤にて約1週間投与することです.出来るだけ早く使って神経の損傷を最小限にくい止めることと初期に患部を冷やさないよう保温することが帯状疱疹後神経痛の予防に大切といわれています.また水疱が出来るだけ破れないように保護して清潔に保つことは、二次的な感染を防ぎ、痛みの軽減に役立つと共に後に残る傷跡の軽減にも役立ちます.さらに痛みに対する治療ですが、消炎鎮痛剤を内服することが一般的ですが、痛みの強いときなどには神経ブロックを行うことがあります.

 神経ブロックには脊髄の外側にある硬膜外腔という場所にプラスチックの管を入れて局所麻酔剤をゆっくり注入する持続硬膜外ブロックと首の前の付け根にある交感神経の集まった部分を局所麻酔薬で麻痺させる星状神経節ブロックがあります.痛みが劇的に治まるほか、交感神経の麻痺により血管が拡張し血流が良くなるため、神経の障害が軽減し、帯状疱疹後神経痛の発生も減らせられる可能性があるとして積極的にブロックを行っている施設もあります.また発症から6ヶ月を超えて痛みが続き、帯状疱疹後神経痛をきたしてしまった場合には、現時点では残念ながら治りにくく完治させる治療法はありません.

 対症療法として消炎鎮痛剤の内服に頼るのは、胃潰瘍などの副作用もあり問題です.抗うつ剤や抗けいれん剤であるカルバマゼピンを使用したり、消炎鎮痛剤を含んだクリームや湿布剤などを用いて経口消炎鎮痛剤の連用を避けるようにする必要があります.さらに神経痛は、ストレス、天気、感情などに左右されることも多いため、普段から心身共に無理をせず、気持ちを出来るだけ穏やかにし、何か集中できる趣味を持つことも有用と思われます.

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