自律神経障害について

2013.03.10 放送より

よく動悸がするとか顔がほてる,あるいは手足が冷たいといった症状を自律神経失調症といいますが,今日は自律神経障害についてお話しいたします.

それでは自律神経障害についてお話しする前にまずは自律神経についてお話しいたします.

自律神経というのは運動神経や感覚神経(これらをまとめて体性神経ともいいます)とは違って意識や意志とは無関係に人間の活動を裏方として支えている神経です.自律神経にはご存じのように交感神経と副交感神経という相反する作用を持つ2つの神経がバランスよく働いております(=拮抗的2重支配).すなわちこれらの神経は寝ても起きてもその時々の身体の状態に合わせて最適な緊張状態を保って,血圧,脈拍,呼吸,体温,消化吸収,身体の代謝などを調節しています.これらは生きていくのに必要な機能であり,自律神経のことを植物神経ともいいます(同様に体性神経を動物神経ともいいます).そして具体的には,交感神経が緊張すると瞳孔が散大して血圧が上がり脈拍や呼吸が速くなるといった興奮状態あるいは戦いの時の状態となり,逆に副交感神経が緊張すると血圧や脈拍は下がり睡眠やリラックス時の状態,あるいは食後の状態となります.

それでは次に自律神経の解剖について出来るだけ簡単にお話いたします.

まずはその神経の上位中枢ですが,これは自律神経の役割毎に分かれて存在し,体中の内臓などの感覚情報は視床を通じて大脳側頭葉内側面にある辺縁系という場所に集められ食欲や快・不快感を感じることができます.それから脳幹の視床下部では各種ホルモンの分泌を支配しています.また延髄には呼吸や循環の中枢があり,そのほかにも中脳では瞳孔の調節,橋では涙腺や唾液腺の分泌調節も行っております.さらに脊髄には交感神経の中枢が第1胸髄から第3-4腰髄に,これに対して副交感神経の中枢は仙髄にそれぞれ存在しており,これらは拮抗的に働いて反射的に血圧,発汗,排尿,排便などを調節しております.

それでは次に交感神経と副交感神経の機能を血圧,呼吸,消化吸収,排泄など具体的に照らし合わせながらお話しいたします.

まずは血圧ですが,交感神経の緊張が高まると心臓は心拍数や収縮力が増し,さらに血管も収縮して血圧は上昇することになります.これに対して副交感神経の緊張が高まると徐脈になり心収縮力は低下し血圧は下降します.次に呼吸ですが,気道は交感神経の緊張で拡張し副交感神経の緊張では収縮いたします.そして呼吸自体も交感神経緊張によって速く大きくなり,副交感神経の緊張ではその逆となります.それから消化吸収ですが,胃腸の運動や消化液の分泌は副交感神経によって促進され,交感神経の緊張によって抑制されます.

すなわち便通に関しても副交感神経の刺激ではよくなり,交感神経の刺激では便秘がちとなります.そしてこれら心臓,気管支,消化管の運動などに関係した副交感神経の支配が,脳幹の延髄から出ている迷走神経という1つの脳神経によって行われているのは非常に興味深い所見であります(脳から出て身体の約半分を支配しているので正に迷走神経と呼ぶのにふさわしい).さらに肝臓では交感神経の刺激でグリコーゲンを分解して血糖が上昇し,副交感神経の刺激ではグリコーゲンの合成が盛んとなって血糖は低下します.それから排尿に関しては,膀胱は交感神経の緊張で膀胱壁の筋肉が緩み膀胱の出口である膀胱頚部の筋肉が締まることにより尿が出にくくなります.これに対して副交感神経の緊張により膀胱壁の筋肉は収縮し排尿が起こります.

以上にように交感神経と副交感神経は相反する作用を有しており,その絶妙なバランスにより生きて行くのに必要な機能が保たれておりますが,これらが障害されますと深刻な状態をきたします.例えばパーキンソン病やその類縁疾患では,血圧が30mmHg以上も下がって失神発作をきたすような重度の起立性低血圧,腸閉塞まで起こしかねないような便秘,夜間10回近くの頻尿や自分では排尿できなくなる尿閉などをきたすことがあります.また多発性硬化症でも脊髄の横断症状により膀胱直腸障害をきたしたり,糖尿病性の神経障害で尿閉をきたしたりすることもあります.これら自律神経の障害は自覚的な症状だけでなく他覚的な症状も伴っているのが特徴です.

これに対して,いわゆる自律神経失調症は紛らわしいのですが,実はこれは正式な疾患名ではなく,めまい,動悸,不眠,顔の火照り,四肢の冷汗などあたかも自律神経障害に起因したかのような症状があり,自律神経の検査をしても異常がない場合に便宜上,症状名としてつけている病名だと思われます.これらの中には,本来,うつ病,パニック障害,心身症,更年期障害などさまざまな病態が隠されていることも多いと思われますので,簡単にこの言葉を使って片付けてしまわずに,それぞれの専門医にかかられて適切な治療を受けられることをお勧めいたします.

 

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