睡眠時無呼吸症候群について

2000.09.24 放送より

 睡眠障害は以前にも取り上げたことがあるのですが、今日は最近注目されております、睡眠時無呼吸症候群についてお話いたします.

 睡眠時無呼吸症候群が、なぜ注目されているかと申しますと、高血圧、不整脈、虚血性心疾患などの循環器疾患や脳卒中、神経変性疾患などの神経疾患などとの関係がとりざたされていること、あるいは過労死、突然死など大変に怖い病気との関連も指摘されてきているためであります.

 まず、睡眠時無呼吸症候群を説明するために、無呼吸の定義から申しますと、無呼吸とは呼吸が10秒以上止まった状態をいいます.そして1晩に無呼吸がどのくらい起こったかを評価するために、1晩に起こった無呼吸の回数を1晩の総睡眠時間で割ります.これを無呼吸指数といいます.この無呼吸指数が、5以上、すなわち例えば、8時間眠ったとして1晩に40回以上無呼吸が起これば、睡眠時無呼吸症候群と診断されるわけです.本症候群は、赤ちゃんからお年寄りまでの幅広い年齢層にみられますが、特に中年以降の男性に多く、その2~4%にみられると考えられています.しかし、女性では0.5~2%と少ないことは興味がある点です. そして本症候群は、一般の健常成人の中にも多数に潜在しており、1994年の統計によれば、推定患者数は全国で約200万人といわれております.

 次に、睡眠時無呼吸症候群の症状について説明したいと思います.まずその名のとおり無呼吸があるのですが、これには、中枢型、閉塞型、混合型の3種類があるのですが、この違いについては病気の原因と関係が深いので後でまた少し詳しく説明いたします.無呼吸以外の症状では、無呼吸が終わって呼吸が再開した時の強烈ないびきや手足を大きく動かす運動などがみられることがあります.また夜間の無呼吸に伴う睡眠不足に伴う過眠や昼間の傾眠(要するに眠たくてたまらない状態)、朝起きたときの酸素不足に伴う頭痛、1晩中口を開けて呼吸していたことによる口の中の乾燥やのどの痛みなどがあります.そして注目すべきことは、このような状態が長年続くことにより、疲れ易さのあまり性格が怒りっぽくなったり無頓着となったり、あるいは活動性が低下したり記憶力が低下して、仕事や学業の成績が上がらないで、真剣に働く意欲に欠け、失業してしまったり、日中の傾眠による交通事故を起こしたりして、 数々の社会的不適応の原因になっていることがあることです.

 次に、先ほど申しましたように、無呼吸の型についてご説明いたします.無呼吸には、まず中枢型というものがあります.これは、脳内の呼吸中枢の活動が停止あるいは活動が上手く伝わらなくなり、呼吸筋の運動が止まってしまう無呼吸の型をいいます.中枢型の無呼吸は、 脊髄小脳変性症など神経変性疾患や脳卒中など器質性脳障害や心不全や不整脈などの循環器疾患などの際にみられることが多いとされています.中枢性睡眠時無呼吸の特徴として、無呼吸は1晩を通してほぼ均等に出現するといわれております.(一般に無呼吸の出現率の高い症例では、ノンREMの浅い睡眠期によくみられ、出現率の低い症例ではREM期に比較的多発するとの報告があります.)次に、閉塞型の無呼吸ですが、これは胸と腹の呼吸運動は保たれますが、鼻腔、咽頭、喉頭といった空気の通り道である上気道の一部に閉塞が起こるため、口や鼻からの換気が停止する無呼吸の型をいいます.閉塞型睡眠時無呼吸を引き起こす疾患としては、鼻中隔弯曲症、鼻アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎など鼻や副鼻腔の疾患、扁桃肥大などの咽頭疾患そして肥満などが知られております.そしてこれらの疾患においては、起きている時からすでに上気道の狭窄を起こす扁桃肥大や舌根沈下などが伴っており、睡眠によりさらに上気道の閉塞が増強することにより無呼吸となると考えられています. さらに、無呼吸の始めは中枢型で、その後、閉塞型に移行する混合型というものもあります.本症候群に対する治療はこれら基礎疾患に対してそれぞれ異なりますので、まず無呼吸の型を調べることから治療は始まります.

 夜間の突然死も勿論怖いのですが、本症候群に長年かかっているうちに、慢性的な酸素不足を解消するため、赤血球が著しく増加して多血症となり血液が粘くなったり、心臓に負担がかかったりなどして、当初は健康でも高血圧、狭心症、心筋梗塞さらに脳梗塞などが合併しやすいといわれております.実際、米国での推計によれば、睡眠時無呼吸症候群の人は、そうでない人達と比べて、高血圧は2倍、心疾患は3倍、脳血管障害は4倍の罹患率がみられているそうなので本当に注意が必要だと思います.

 *高血圧:夜間の無呼吸が慢性化すると、持続した高血圧を呈するようになるが、 無呼吸の治療によってこの高血圧は速やかに軽快する.また、健康人では夜間睡眠中に約20%の血圧降下がみられるが、本患者では、逆に、睡眠時無呼吸に一致して血圧が上昇します.

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