頭痛について:その2 片頭痛

2010.01.31 放送より

 先日は頭痛の中でも最も多いと言われる緊張型頭痛についてお話いたしましたが,本日はその次に多いとされる片頭痛についてお話しいたします.片頭痛の患者さんは成人の約8%すなわち全国では約800万人おられるといわれておりますので,緊張型頭痛の約1/3の頻度になります.ところが実際に病院を受診される方は片頭痛の方が約3倍多いとされています.これは緊張型頭痛が梅雨空のようであると例えられるのに対して,片頭痛は突然拍動性に出現して雷雨のように激しいため,辛抱しがたいためだと考えられています.そして皆様もご存じのように女性に多い病気で,女性には男性の約4倍みられ,思春期頃から多くなり,最盛期は30歳代で,大体60歳頃にみられなくなります.また家族歴があることもしばしばあり,特に母から娘へと母系遺伝の例が多いとされています.

 始めに片頭痛の症状ですが,片頭痛というくらいですから,通常は片側性で眼窩後部や前頭ないし側頭部にまるで血管の拍動に合わせて頭がズキンズキンと痛むことが典型的ですが,左あるいは右と発作の際に部位が移動したり,あるいは両側性に起こることもあります.発作の初期には鈍痛あるいは頭重感として自覚されるくらいですが,頭が割れんばかりに激しくなって発作が4時間ないし72時間程度持続いたします.このため痛みのため日常生活が妨げられ,寝込んでしまうくらい重度になることも多いのです.また発作中,悪心や嘔吐を伴ったり,光や音に対する過敏性を認めることもありますし,運動(特に階段の上り下り)や咳は発作を増悪させるといわれています.

 一般には発作の頻度は月1~2回から3~6ヶ月に1回程度ですが,こういった発作が5回以上あり,脳血管障害,髄膜炎,脳腫瘍など脳の器質的疾患を除外できれば,片頭痛と診断できるとされています.また片頭痛の中の約5分の1には前兆を伴うもの(古典的片頭痛)があります.前兆には視界にチカチカした光の点が出現する(いわゆる閃輝暗点),指がジンジンする感じ,半身の麻痺,言語障害などがあり,脳の局所神経症状と考えられております.前兆は4分以上(大体20~30分くらい)続き,60分以内には終わり,次いで片頭痛が出現します.前兆を伴うものの方が,頭痛の持続時間が長いといわれています.

 また発作の誘発因子としては,食べ物(チーズ,チョコレート,ナッツ,アルコールなど),睡眠不足や睡眠過剰,空腹,ストレス,人混み,強い光,外傷,薬物(ニトログリセリンや血管拡張薬など)が知られています.また女性では月経の直前や月経時に多く(月経関連頭痛),妊娠時には起こりにくいことが知られています.また頭痛発作の24ないし48時間前に予兆として倦怠感,眠気,空腹感,うつ,興奮などを自覚することが約20%に認められるという報告もあります.

 次に病因についてお話しますと,最も可能性の高いものとして三叉神経血管説があります.これは,脳神経の中で頭部,顔面,口,鼻,角膜,硬膜などの感覚を司っている三叉神経から,何らかの刺激によりサブスタンスP,ニューロキニンA,CGRPといった血管作働性の神経ペプチドが過剰に分泌されます.そしてこれにより血管が過剰に拡張して透過性が亢進し,血管の周囲に炎症が起こり,三叉神経を介して脳に痛みとして伝わるというものです.その他に血管説があり,これはまず何らかの誘因により血液中の血小板からセロトニンという物質が過剰に放出され,頭蓋骨内外の血管が収縮します.この際,脳の血流が低下しますと閃輝暗点という片頭痛の前兆が生ずるといわれています.次いでセロトニンが分解されて枯渇すると今度は血管が過剰に拡張し,これによって血管の透過性が亢進し,各種炎症物質が産生され,血管壁に炎症や浮腫をきたすというものです.

 治療としては,発作時の対処と予防に大きく分けられます.まず発作時ですが,特効薬的な薬としてトリプタン製剤があります.これは,選択的に脳の血管と三叉神経のセロトニン(5-HT1B/1D)受容体と結合し,異常に拡張した血管を直接収縮させるといわれています.発作直後に内服すればする程よく効き,大体30分~1時間で頭痛はおさまります.但し血管を収縮させるため狭心症や心筋梗塞を誘発させる恐れがあり,虚血性心疾患をお持ちの方は要注意です.またこのような鎮痛薬をあまりに使用しすぎることは薬剤誘発性の慢性連日性頭痛に移行する危険性があります.月に10回以上も鎮痛薬を使用する場合には,先に述べましたような誘発因子を避けるように努めることや予防薬を用いるようにします.予防薬としては塩酸ロメリジンというカルシウム拮抗薬(脳血管の収縮抑制や血小板の凝集抑制などの作用が考えられています),β遮断薬,抗うつ薬,ある種の抗てんかん薬などが用いられており,発作を3割程度軽減できるといわれております.

 片頭痛は,発作時には余りにも苦しくてなかなか受診もしにくいものですが,トリプタン製剤を使ってみれば随分と楽になりますので1度専門医にかかって診断を確定していただくことをお勧めします.

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