反射と反射神経について

2011.11.13 放送より

 今日は反射と反射神経についてお話しいたします.まずは反射ですが,反射の医学的な定義は,特定の刺激に対して意識されることなく反応が起こることとされております.このため反射にはその刺激を感じる受容体(皮膚の表面の痛覚受容体など),それを伝える経路(=求心路),その刺激に対して反応を起こす反射の中枢(=折り返し点),その反応を末梢に伝える経路(=遠心路),反応を起こす効果器(筋肉など)があります.

 そして生理的な反射には,大きく分けて体性反射と自律神経反射があります.このうち体性反射には深部反射と表在反射があり,深部反射は伸張反射である膝蓋腱反射(よく医師がハンマーで膝を叩きますと足がポンと上がります)が,代表的です.これは膝の腱がハンマーで叩かれることにより,局所的に伸ばされるため,その腱に関係した筋肉(膝蓋腱反射では大体四頭筋)が収縮して足が上がるのです.

 また表在反射には咽頭反射(喉の奥を触るとオエっとはきそうになる)などがあります.つまりこれらは1種の防御反応といえます.そのほか体性反射の中には屈曲反射,原始反射,病的反射そして姿勢反射などと呼ばれているものもあります.このうち屈曲反射は皮膚や筋肉などが有害な刺激を受けると,刺激を受けた部位を刺激から遠ざけるように屈筋が収縮する反射です.

 それから原始反射は新生児期にみられ,中枢神経系の発達とともにやがては消失して見られなくなる反射のことを言います.代表的なものに,脊髄レベルで起こる把握反射(赤ちゃんの手のひらに指を当てると無意識に握ろうとする,生後3ヶ月頃に消失)や,脳幹レベルの反射である吸引反射(唇をこすると,乳児が乳を飲むように唇が動く反射,生後4ヶ月頃まで見られる)などがあり,赤ちゃんの神経の発達に障害がないか,あるいはその後に障害が起こっていないかを見るのに使われます.

 また病的反射というのは,小児の時には見られていた反射がその後の中枢神経系の障害により再び見られるようになるものを言い,先ほどの把握反射や吸引(飲)反射などに加え有名なBabinski反射があります.これは足の裏を鍵など少しとがったものでこすると足の親指が足の甲側に反り返るという反射で1種の逃避反射です.大体2歳ころまでの赤ちゃんには普通に見られるのですが,その後の中枢神経系(錐体路という運動神経の経路)の発達により抑制されて見られなくなります.つまり逆にこの反射がまた出現すると言うことは,錐体路の障害を意味するわけです.

 さらに姿勢反射ですが,これは姿勢を維持しようと無意識にコントロールする反射を言います.その代表は立ち直り反射で,これは関節の位置を知る深部感覚や平衡器官,それに視覚の情報などを脊髄,脳幹,小脳などで統合して身体の筋緊張を調節することにより直立姿勢を維持する反射であります.

 次に自律神経反射(内臓反射とも言います)は,交感神経や副交感神経を介して血圧や脈拍,発汗に胃腸の運動などをコントロールしており全身の状態を保って生きて行くのに必要な反射であり,頸動脈洞反射(喉元を圧迫すると脈がゆっくりとなり血圧が下がる)や圧発汗反射(圧迫が加わると汗をかかなくなる),対光反射(眼の瞳孔に入ってくる光の量を調節する反射)などがあります.

 さてそれでは反射神経ですが,そもそも神経には中枢神経と末梢神経があり,さらに末梢神経は運動神経,知覚神経,自律神経に分けられますが,反射神経という名前の神経は医学的にはどこにもありません.飛んできたものをとっさによけたり,机の上から落ちかけたものをパッと手でつかんだり出来ると反射神経がよいなどと言われます.あるいは徒競走で素早くスタートを切れたり,テレビゲームをする時,素早く上手に反応出来たりするのも反射神経がよいと言われます.この両者は,同じ反射神経と言っても少し違うようです.すなわちとっさにものからよけたり,ものをつかめる方の反射神経とは,刺激を受けた時に脳で意識せずに無意識のうちにその刺激に対して素早く身体を反応させることを意味しており,医学用語の反射に近いようです.

 これには,視覚を始めとしたいろいろな感覚刺激,各種姿勢反射,脊髄レベルでの屈曲反射などが関係しているものと思われます.それに対して徒競走のスタートやテレビゲームの操作が上手な方の反射神経は,充分に神経を集中して反応しているので医学用語の反射とは少し意味が異なるようです.この場合,聴覚刺激や視覚刺激(特に動体視力)などに対していかに素早く反応できるか,あるいはいかに上手に反応できるかであり,これには充分に集中していること,筋肉がリラックスして反応しやすい状態にあること,そして動作や操作の技術を高めておくことなどが関係しています.すなわちトレーニング効果が見込まれます.

 本日は,反射および反射神経についてお話しいたしましたが,神経内科の診察では,反射を用いて症状の責任病巣の局在を調べております.一見不思議に思われるかも知れませんが,ちゃんと意味があってしておりますので,興味がお有りの方は,診察の時にでもお聞きいただきたいと思います.

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