時差ぼけについて

2016.03.27 放送より

 今回は病気とはちょっと離れるのですが,皆様も経験されたことがあるかと思われます時差ぼけについてお話しします.時差ぼけ,英語ではjet lagすなわちジェット機に乗って一気に数時間以上も時差のある地域間を短時間で移動すると体内時計と現地時間にずれが生じて心身に不調をきたす状態を言います.そしてこの時差ぼけの症状ですが,通常最も多いのが不眠や日中の眠気といった睡眠に関わる症状です.そのほかにも頭痛や頭重感,めまいや眼の疲れ,疲労感にイライラ感,食欲不振に吐き気といった胃腸障害などがあります.そしてこれらの症状は個人差が大きく,通常直後から現れて数日間続くことが多く,中には1週間程度続く人もいる反面,ほとんど症状の現れない人もいるようです.一般に時差が4-5時間以上有ると起こると言われており,また西に移動するより東に移動する方が起こりやすいといわれています.それから朝型人間が夜型よりも時差に弱いとも言われております.

 それでは次に時差ぼけがどうして起こるかについてお話しします.先ほど,時差のある場地域間を高速度で移動すると,現地の生活時間と体内時計がずれて(外的脱同調),心身に不調をきたすと申しましたが,この不調は体内時計によってコントロールされている体温やホルモンの分泌,睡眠と覚醒のリズムなどがバラバラになってしまう(内的脱同調)ことによる症状です.この時差ぼけの鍵を握る体内時計について少し詳しくお話ししてみます.体内時計は医学的には概日リズム,英語ではcircadian rhythmと言います.このcircaというのはだいたいと言う意味,dianは日と言う意味でおおよし1日のリズムという意味になります.すなわちこの概日リズムとは生理現象が約24時間周期で変動していることをいい,動物に限らず植物,菌や藻などほとんどの生物に存在しているのだそうです.

ちなみに人間では真っ暗な状態での実験から本来の体内時計は25時間周期とされています.概日リズムは生物の身体の中で内在的に形成されますが,外的な刺激すなわち光や温度など自然からの刺激などのほか,運動や食事,仕事など生活の習慣などによっても影響されます.その中でも光の影響が最も強力であり,時計を進める方向に作用します.すなわち毎朝,光に当たると夜寝る時間は早まり,夜間に強い光に当たると寝つきが悪くなります.そして概日リズムは,次の3つの基準で定義されるそうです.すなわち,1.そのリズムが恒常的な状態(例えばずっと暗闇のまま)でも約24時間の周期を持続すること,2.そのリズムの周期が光パルスや暗パルスによってリセットされること,3.そのリズムが一定範囲内の温度では周期が変わらないこと,だそうです.そしてこの概日リズムの中枢は,ほ乳類では自律神経の中枢が集まっているという視床下部,その中の視交叉上核(suprachiasmatic nucleus; SCN)というところに存在するのだそうです.

といいますのが視交叉上核を破壊された動物では規則正しい睡眠・覚醒リズムが完全になくなってしまうからだそうです.この視交叉上核の視交叉とは左右の視神経が交叉して左右逆の大脳半球の中に入ってゆく部分で脳下垂体のすぐ近くにあります.この視交叉上核は網膜視床下部路という経路により網膜にあってメラノプシンと呼ばれる感光色素によって視細胞が感じる光の情報を視神経から受け取ります.そして視交叉上核は網膜から得られた日長の情報を他の情報と統合して松果体へ送信すると考えられております.松果体ではさらにこの情報に応答して別名睡眠ホルモンとも呼ばれるメラトニンを分泌します.このメラトニンは睡眠を促進しており,その分泌は夜の7時ごろから高まり,23時頃にピークを迎え,その後減少し始めて昼間は低いことが知られています.そして概日リズムによって内分泌・代謝系および自律神経系も影響を受けております.例えば,血圧上昇に関係する内因性カテコラミンは,ヒトでは活動を開始する起床時〜午前中にかけて分泌されます.またストレスに打ち勝ち身体を元気にするステロイドホルモンも同様です.これに対して成長ホルモンや甲状腺刺激ホルモンなどは睡眠時のみに分泌されると言われています.

 さてそれでは時差ぼけに対する対策ですが,この概日リズムをはやく現地の時間に併せることが基本となります.そのためには,まず飛行機に搭乗後すぐに時計を現地時間に合わせて目的地の新しい生活リズムに早く慣れるよう心づもりをします.機内食は目的地の時間に合わせて提供されるので出来るだけ食べるようにします.機内で眠った方がよいかどうかですが,それは目的地に到着する時間がいつになるかで変わってきます.午前中に到着する場合(西回り便)は出来るだけ起きておき,着いたら日の光を出来るだけ浴びて概日リズムがリセットしやすいようにします.夕方に到着する場合(東回り)は気合いで少しでも仮眠を取った方がよいそうです.無理に眠ったり起きたりするためアルコールやカフェインを取ることは避け,代わりに眠気を促すためには高炭水化物食品を,あまり眠くならずに済ませるためには高タンパク質食品を摂るとよいそうです.まあいずれにしても出来ればゆったりとした余裕を持って旅行を計画することが出来のが1番かと思います.

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