パーキンソン病の新しい治療について

2016.11.27 放送より

 本日は,パーキンソン病の新しい治療についてお話しします.パーキンソン病は1817年に英国のジェームズ・パーキンソン医師によって「振戦麻痺」と言う名前で報告された疾患であり,その後,1900年代になってパーキンソン病と名付けられました.そして現在ではパーキンソン病に対して最も有効な薬剤として知られている有名なL-ドーパ製剤は,1967年にその有効性が報告されました.このように古くから知られている病気ではありますが,最近では人口の高齢化とともに有病率も増え,また効果のある薬剤があるゆえ経過も長いため,発見当初は主に運動障害をきたす病気とされていたのが,この約15年で自律神経障害や精神障害,さらには感覚障害など非運動症状が続々と報告され,全身性の病気であることが分かってきました.とは言いましてもやはりADLやQOLを大きく左右するのは,やはり運動症状であり,また治療効果を最も評価しやすいこともあってこの10年でも次々と新しい治療が開発されてきております.

 さて新しい治療についてお話しする前に,簡単にパーキンソン病の運動症状とその発症機序について説明いたします.まずパーキンソン病の症状ですが,最も目立って初発症状として多いのが安静時振戦です.これは4-7Hzと比較的ゆっくりとした手足の振るえでじっとしているときに見られるのが特徴で初発症状の約2/3を占めると言われています.それから筋固縮といって手や足などの関節に無意識に力が入っており,このために手足が強ばるとか見かけ上,力がはいりにくいとかの自覚症状を呈します.さらに無動といって動作が小さくなったり遅くなったりする症状もあり,声や字が小さくなったり仮面様顔貌といって顔の表情が乏しくなったりします.無動や筋固縮によって歩行時に足を引きずって小股になってきたとして受診されることもあるようです.これら3つを3大主徴と呼び,このうち筋固縮を含んで少なくとも2つが認められれば,パーキンソン病を疑うことになります.これら3つの症状はL-ドーパがよく効く症状でありますが,その後,経過中に遅れて出てくる症状に姿勢保持反射の障害があり,これが出現すると足がすくんだり歩き出すと逆に止まれなくなったり,転びやすくなったりします,これも合わせて4大症状と言いますが,ここまでそろってくるとパーキンソン病が中等度に進行したとして特定疾患に認定されることになります.そしてこのような症状の原因は,中脳の黒質という部分のドパミン産生神経細胞が神経変性といって原因不明に障害されて数が減少してゆき,残りが20%前後になったら,ドパミンが大脳基底核の線条体という部分に充分届かなくなって機能障害をきたすことによるとされております.従いましてこのドパミンを補充することが1番簡単な治療法であり,ドパミンの前駆物質であるL-ドーパの内服が治療の基本になっているというわけです.そして障害されている黒質の神経細胞中にレビー小体と呼ばれる封入体という構造物が見られることから,その正体を突き止めることが,パーキンソン病の病因の究明につながるとして現在も多くの研究者が研究に取り組んでおります.そのレビー小体が最近では中脳の黒質以外にも脳のあちこちのみならず,心臓の交感神経,胃や腸,さらには皮膚にまで見つかってきましたので,パーキンソン病は全身性の疾患であると確かめられてきたわけです.

 それでは今年の9月に認可されたばかりの治療法についてお話しします.L-ドーパは今でも最も有効なパーキンソン病の治療薬ですが,1番の欠点は効いている時間がだいたい数時間と短いことでした.このため当初は1日に3回の内服で済んでいたところが,経過とともに薬の効き目が落ちてきて,1日に6回以上も飲む必要が生じているケースもあります.これを補うために従来は深部大脳刺激術という手術を行う方法もありますが,この度,胃瘻を増設してここから空腸にまで細いチューブを通して留置し,これを用いてDuoドーパというゲル状にしたL-ドーパをポンプによって1時間に少量ずつ一定量注入してゆくというやりかたです.この方法の利点は,空腸というL-ドーパの吸収される部位まで直接的にL-ドーパを投与できるため吸収が極めて安定し,かつ血中の濃度を一定に保ちやすいことです.このためオフ時間といって薬の効きが悪い時間を減らしながら同時に効き過ぎてジスキネジアという不随意運動が出てしまうことも減らすことも可能です.全国的にまだ30施設前後と普及はこれからですが,現在,当院でも患者さんのニーズに合わせて実施できる施設として導入を準備中です.

 このほかにも米国ではこれまでなかったL-ドーパの徐放剤が今年に入って認可されましたし,さらにL-ドーパの吸入薬も研究中と効いております.さらに日本でもL-ドーパ以外で何とか病気の進行を遅らせる薬はないかと数多くの会社が必死になって研究開発を進めております.当院でもそのような薬剤の候補となる可能性のあるものについて,常時,複数の臨床治験を行っておりますので,興味のある方は問い合わせいただけましたら,ご相談に乗りたいと思います.

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