一過性意識消失発作(いわゆる失神)について

2006.04.16 放送より

 最近、仕事が非常に忙しくて意識を失いそうになっているのですが、今日は一過性意識消失発作いわゆる失神についてお話しします。

 狭い意味での失神は、脳に血液が充分にゆかず一時的に意識を失うことをいいます。そして広い意味での失神は一時的に意識を失うものの自然に回復するものをいい、その中にはてんかん発作、精神的興奮、脳震盪なども含まれます。狭義の失神の場合、脳に血液が流れてこなくなると脳の酸素不足から5~10秒で意識がなくなり、15秒以上ではけいれんがおこるといわれています。狭義の失神のうち1/3は原因不明であり、通常は数秒から数分で意識は回復し、後に後遺障害も残しません。しかし失神の中には危険な不整脈発作などによるものもあり、その時はたまたま回復しても次回発作時にはそのまま死に至るようなこともありますので、失神をきたす疾患別に説明してゆきます。

 まず失神をおこす原因で最も多いものは、反射性の失神であり約1/4を占めます。その反射とは自律神経の中で副交感神経に属し心臓や血管を支配している迷走神経の過剰な反射性興奮であります。医学的には血管迷走神経失神あるいは神経調節性失神ともいわれます。何も基礎疾患が無い若年者が朝の朝礼の間に倒れたり、採血で針を刺して血液を抜きかけたばかりなのに気分が悪くなって倒れるのはこの反射による失神です。

 さらにネクタイを強く締めすぎたり急に後ろを振り返ったりした際、頸動脈洞失神といって同じく副交感神経の反射的な過剰興奮で失神が起こり、これは50歳以上の男性に多いといわれています。また多系統萎縮症など自律神経に障害をきたす神経疾患がある場合は、咳、食事、排尿、排便などの際、反射的に失神をきたすことがあります。また病気以外でも血圧を下げる薬、抗うつ剤などの薬物を内服している場合、交感神経の機能不全をきたして反射性の失神がみられることもあります。さらに起立性低血圧いわゆる立ちくらみも程度が強いと(例えば血圧が30mmHg以上下がる)、失神をきたすといわれています。この場合、自律神経障害のある人以外の一般の人でも高齢者で体調が悪かったり、脱水気味の時には起こすことがあるので夜間のトイレは特に注意が必要です。

 次に大きな原因を占めるものに心原性失神があります。この頻度は約20%ですが、重篤なことがあり注意を要します。特に悪性度の高いものに心室細動を代表とする頻脈性不整脈があり、心臓の拍動が通常は60-100くらいであるところが、数え切れないくらい速くなり、その結果、心臓の拍動は空回りして無効となり脳に血液が行かなくなります。 この発作が続けば、 1分経過するごとに助かるチャンスは約10%づつ失われ、10分後にはほとんどの人が死にいたるといわれています。 通常、何の前触れもなく突然来ることも多く、これに対する治療は電気的除細動ですが、救急車で運ばれる時間も惜しいため、最近ではAED(自動体外式除細動器)を学校や人がたくさん集まる施設などに備え付けられるようになってきています。また頻脈とは逆で、脈がゆっくりとなる徐脈性不整脈でも失神する場合があります。通常、長距離ランナーなどの例外を除くと心拍数が30台になるとアダムストークス発作といって意識を失います。これに対する治療は、心臓ペースメーカーであり、これにより完治させることが出来ます。この他、心臓では、狭心症や心筋梗塞、肥大型心筋症、動脈弁閉鎖不全を始めとした弁膜症などの器質的疾患がある場合も重篤なことが多く、失神の予防には基礎疾患の治療が必要です。

 さらに脳血管の異常によっておこる失神としては、一過性脳虚血発作のうち椎骨脳底動脈循環不全、脳底動脈型片頭痛、鎖骨下動脈盗血症候群などでみられます。これらは脳の血管の動脈硬化だけでなく頸椎の変形なども原因となります。また脱水、血液粘度の上昇、血圧の変動なども誘因となることがありますので要注意です。

 それからその他の原因としてはてんかん発作、低血糖や副腎不全などの内分泌異常によるもの、極度の貧血、ヒステリーや過換気症候群などによるものなどさまざまな原因があります。てんかん発作の場合、間代性けいれんのような手足に目立つけいれんがあれば分かりやすいですが、小発作といって一瞬意識がなくなってすぐ元に戻るような分かりにくいものもありますので、詳しくは脳波の検査が必要です。内分泌異常や貧血など内科的疾患の部分症状で失神がみられる場合は、血液検査などで鑑別診断を行い、原疾患について正しく治療をしてゆくことが必要です。 そして精神的な疾患によるものの場合、単なるヒステリー性の失神では意識がないように見えるだけですが、過換気症候群で血液中の二酸化炭素が極度に減ると脳へ行く動脈の太さが細くなり脳血流も減少しますので、発作時には紙袋法による治療が必要になります。

 以上、本日は失神についてお話しましたが、心配することのない反射的なものが多い中で危険な不整脈などが隠れていることもありますのでご注意下さい。

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